@ | 数年前、日本で行なわれたあるシンポジウムで、タイの建築家、スメット・ジュムサイは次のように述べた。欧米諸都市が都市開発において停滞しているのに対し、日本からは1000b建築、2`b建築のような構想が発表され、日本のみが明るい21世紀を迎えようとしているように見えると。 |
A | しかし、今、超高層建築の高さを競っているのは、アジア諸国の都市である。ソウル、上海、クアラルンプール、ジャカルタ、シンガポール、香港、台北。 |
B | 都心には超高層ビルが林立し、そこではアジア英語をしゃべるビジネスマン達が活躍している。これはひとつのアジア的都市現象とも呼べるものである。 |
C | これらの都市に共通していえることは、高層建築が一般化しつつあることだ。庶民の一般的な住宅としては、高層住宅が忌避される傾向にある欧米とは、逆の現象である。 |
D | このような現象がなぜこれらの都市において展開し、受入れられているのかについて、考えてみなければならない。 |
E | この課題も含め、アジア都市、特に、海洋性アジア諸国の将来的な課題はどのようなところにあるのだろうか。これに関連し二つの課題を提起した。 |
F | 一つの課題は都市の個性をいかに保持するかということである。アジアの都市にとって不幸なことの一つは、近代化というものが欧米の衣を着て訪れてきたことだ。その結果、個性形成の方向を見失っている。 |
G | 一方、いつの時代においても、都市が活力をもつために欠くことができないのは、交流が盛んであることである。人や情報、物の交流、特に、人や情報の交流が不可欠である。 |
H | そうした交流が盛んであるためには、それぞれの都市が個性を、固有性をもたなければならない。このことにこれらのアジアの都市は成功しているのだろうか? |
I | 第二の課題は、アジアの都市は共通して、都市の大部分がカンポンであることだ。日本ではこれを密集市街地という。こうした市街地は、欧米的視点でみればスラムである。しかし、スラムとは断定できない特徴をもっている 。このカンポンの存在と、高層住宅の普及には相関があるのかもしれない。 |
J | 都市計画は実験ができない。それぞれの都市が唯一の存在であるからだ。したがって、わたしたちには、歴史的に、あるいは同時代において比較地域的に他の都市を参照していくしか、都市のあり方を検討する方法はない。 |
K | それゆえに今回のような会議をもつ意義があると考える。 |