1997/12 No.10 日本都市計画学会 関西支部だより

委員会から
1996年度第1回都市計画シンポジウム


1) シンポジウムの概要
テーマ:積み重ねとしての都市−都市基盤としての自然生態−
基調講演:服部 保 (姫路工業大学 自然・環境科学研究所)
話題提供・パネリスト: 橋本 恒一 (住宅・都市整備公団関西支社)
上甫木昭春 (姫路工業大学 自然・環境科学研究所)
角野 幸博 (武庫川女子大学 生活美学研究所)
コーディネーター:増田  昇 (企画・事業副委員長 大阪府立大学農学部)
日 時:1996年10月31日(木)15:00〜18:00
場 所:兵庫県立人と自然の博物館
参加者:85名
追 記:見学会を同時開催
見学場所:兵庫県立人と自然の博物館
参加者:60名

2) 趣旨およびパネルディスカッションの概要
[報告:増田 昇 企画・事業副委員長(大阪府立大学農学部・教授)]

《趣旨》
 本シンポジウムは、前年度から継続している「積み重ねとしての都市」を考える一環として開催したものであり、特にニュータウン開発を事例として自然生態を基調とした持続的な都市のあり方を探ることを目的とした。
 
《基調講演および話題提供》
 服部保氏(姫路工業大学)の基調講演は、兵庫県三田市フラワータウンの調査事例を基に報告され、生物の多様性の維持から樹林を保全する場合10haが一つの基準となりその内部に多様な微地形を含むことが重要であることが述べられた。さらに、ニュータウン開発で生物の多様性を持続させるための緑地計画は、上記の10haの保全緑地を核として小規模な残存林や人工系緑地を繋ぎ合わせていくというネットワークが必要であることが指摘され、その中で個人住宅の庭の緑が重要な役割を果たすことが強調された。
 以上の基調講演を受けて3名のパネラーの話題提供がなされた。
 上甫木昭春氏(姫路工業大学)は、上記の調査事例の中では生活者の視点から研究を進めており、ニュータウン居住者の居住地の選択には緑環境が重要な要素となっている点を述べるとともに、緑地計画は緑自体が保有する内部特性と緑へのアクセスビリティの両視点からアプローチすべきであると述べた。
 橋本恒一氏(住宅都市整備公団)は、同公団が都市建設に伴って緑環境を育成してきた実績を報告するとともに、先進的な事例として港北ニュータウンでは谷戸の自然地形を基調として約90haにおよぶ樹林地や水辺を保全した「グリーン・マトリックス・システム」を構築していることを紹介した。また、八王子みなみのシティでは生態系の維持・再生のための数々の試みがなされていることや自然との交流の種まきとして地元の森林組合の協力を得て「みなみの自然塾」がニュータウンの建設段階から開講されていることも紹介した。
 角野幸博氏(武庫川女子大学)は、都市文化や生活文化の視点から自然を捉え、現在のニュータウンにおける緑や自然は単にテーマ的に扱われている段階であり実態が非常に見えにくいことを指摘した。今後、生活文化として緑や自然が定着していくためには、緑や自然がどれだけ人々のアクティビティを刺激するか、言い換えると緑や自然に対する創造的行為をどれだけ誘発させるかにかかっていることを強調した。
 
《ディスカッション》
 討議では、生物の多様性を持続させるための具体的な技術論が活発に論議された。また、今後の方向性として、地域が保有する土地の記憶を継承し固有性を保持するためには環境の基盤ともなる地形の保全や活用が重要であることや生物生息環境としても生活風景としても多様性や選択性を高めることが重要であることが指摘された。さらに、生活文化として醸成していくためには、活動の拠点づくりが重要であるとともに将来の環境像を明確することの必要性が論議され、そのための方策の一つとして、目標植生を掲げ風景イメージを明らかにすることといった提案もなされた。



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