1997/12 No.10 日本都市計画学会 関西支部だより

委員会から
第2回都市計画講演会報告


1) 講演会の概要
テーマ:琵琶湖と人間活動の持続的発展を考える
話 題 提 供: 中村 正久 (滋賀県琵琶湖研究所 所長)
柴田いずみ (滋賀県立大学環境科学部 教授)
コメンテーター: 今井 紘一 (滋賀県土木部 環境管理監)
村橋 正武 (立命館大学理工学部 教授)
増田  昇 (企画・事業副委員長 大阪府立大学農学部)
コーディネーター:榊原 和彦 (企画・事業委員長 大阪産業大学工学部)
日 時:1996年11月30日(土)15:30〜17:30
場 所:立命館大学びわこ・くさつキャンパス
参加者:180名

 
2) 趣旨および講演会の概要
[報告:榊原 和彦 企画・事業委員長(大阪産業大学工学部)]
 
《趣旨》
 琵琶湖は、わが国最大の淡水湖として豊富な水量を貯え、古くから地域の人々の生活と密接なつながりをもち、地域の産業・文化の発展に寄与するとともに、京阪神の貴重な水源となっている。さらに、琵琶湖は、自然調整地として全国的な観光・レクリェーションの場としてのみならず、わが国最大の淡水湖として学術研究の場となるなど極めて広範な役割と存在価値を持つ貴重な湖である。
 このような琵琶湖と人間の関わりを持続的に発展させていくためには、琵琶湖とその集水域の水環境に関わる人間活動の諸様相を客観的に、かつ、総合的に捉えることが求められる。1971年から着手された琵琶湖総合開発事業は、このような基本的視点に立ってなされ、2度の期間延長を経て継続されてきたが、本年度には、その事業が終わろうとしている。ところが、琵琶湖およびその集水域では、水環境をはじめとする各種の課題も数多く残されている。
 本講演会は、琵琶湖およびその集水域での水環境をはじめとする現在の諸様相を学び、今後の琵琶湖と人間活動との持続的発展のあり方を議論するために催したものである。
 
《話題提供》
 中村正久氏(滋賀県琵琶湖研究所)からは、『琵琶湖および集水域における開発の現状と課題』をテーマとして話題提供がなされた。まず、琵琶湖の特質を踏まえての、資源としての利用価値、非利用価値に関する課題の考察の下に、「量をめぐる資源価値の創出」を目的とした琵琶湖総合開発事業は一段落するが、「質をめぐる資源価値(良好な湖水質、健全な生態系)の創出」は未だしであって、新たな政策対応が迫られているという現状が指摘された。さらに、環境資源回復に向けた研究課題が提起された。
 柴田いずみ氏(滋賀県立大学環境科学部)からは、『琵琶湖流域のこれからのまちづくり』をテーマとする話題提供があった。はじめに、「異邦人」「来訪者」としての新鮮な目で見た、滋賀県における個性的な数々のまち(長浜、彦根、近江八幡、草津)のまちづくりに関して、フィールド・ワークなどで得られた豊富な事例を示しながらの考察が紹介され、次いで、歴史資産、文化資産、自然・風土を活かし滋賀のまちづくりの方向性や将来について、多くの示唆が述べられた。
 
《コメント》
 今井紘一氏(滋賀県土木部)からは、滋賀県政の基本理念である「新しい淡海文化の創造」への取り組みに関し、環境・歴史・風土を重視した地域づくりを進めていること、具体的には、近江歴史回廊構想の推進、「ヨシ群落保全条例」の制定、「住みよい福祉のまちづくり条例」の制定等々を行っているとの話があった。そして、「持続可能な節度ある発展」のもとに、次世代に引き継ぐことを目指しているとのことであった。
 村橋正武氏(立命館大学理工学部)からは、わが国社会の動向と都市・地域整備のあり方を踏まえて、琵琶湖地域の今後の整備のあり方について提案がなされた。提案の内容は、@広域的活動実態を踏まえた都市・地域整備の目標の設定、Aミチゲーションとコンパクトシティの発想による開発、保全区域の設定、Bポスト琵琶湖総合開発を目指した長期的総合的な都市・地域整備計画の樹立、などであった。
 増田昇氏(大阪府立大学農学部)からは、琵琶湖と人間活動との持続的発展を考える上でのランドスケープの持つ意味と役割を指摘した上で、ランドスケープデザインの立場から見た今後の方向性として、@ランドシステムの保全、再生、創出に関わるランドフォーメーション(地形構造)の設定とそれに適合した土地利用計画、Aオープンスペースシステムに立脚したランドスケープデザインの展開、の必要性が指摘された。
 
《ディスカッション》
 ディスカッションにおいては、「持続可能」とはどういうことか、人間の視点からではなく湖の立場から水域、水況を考える必要があるのではないか、陸の側から琵琶湖のために何ができるか、琵琶湖地域のもつ文化の深さ、多様性は、人間が自然と関わる上での知恵と実践の現れそのものであり、それらこそが今後の琵琶湖を考える鍵となるのではないか、これ以上琵琶湖の水質をよくする見通しはあるのか、など、多様な側面からの論議がなされた。



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