高野氏は、まず、開発の意義と文化財保護の意義を述べられ、開発者側と保護(論)者側との相互理解の下に、開発と遺跡保護の接点を求めることの重要性と種々の問題点・課題を指摘された。特に、開発者側の人々には、開発における遺跡処理は開発者側の責務であり、総合の時代に相応しい広範囲の素養の蓄積への努力が必要であること、保護側の人々にも、現代的価値観の変容に直面し対応へ努力する必要があること、などが述べられた。また、遺跡対応への必要性(件数)の多さに対して技術者の少ないこと、費用の問題、遺跡学術調査の99%は実は開発のお陰で成されていること、などについても言及された。さらに、保存への工夫の実例(阪神高速道路の難波宮祉付近の地表部走行は、視線確保のためであり、これにより当初の斜長橋案より工費ははるかに安くなったなど)が紹介され、理をつくして話し合い、方策を練ることで満足できる解決策を探ることは可能であることが示された。質疑においては、関西空港、万博等の実例に基づいた討議や調査のシステムの問題、事績を正しく語り継ぐことの必要性などの論議がなされた。 |