1998/4 No.11 日本都市計画学会 関西支部だより

視点
御坊市・島団地再生事業

平山 洋介 神戸大学


 和歌山県御坊市の島団地は同和地区内に位置する226戸の公営・改良住宅である。物的な荒廃化が進み、入居者の生活困窮が深まるなど、多面的な問題に直面してきた。これに対して、ワークショップ方式にもとづく独創的な再生計画が立案され、実行に移されてきた。

 プロジェクトの特徴としては、現場に張り付く"オンサイト"の行政組織として島団地対策室が設置されたこと、住宅の建て替え事業を行うハウジング・プログラムは、個別世帯へのケースワーク・プログラム、住民参加を促進するコミュニティ・プログラムとの有機的な連関をもっていること、などが指摘される。

 事業は10期にわたって実施される。昨年の暮れに第1期の住棟がようやく完成した。対策室が設置されてから6年間が経過している。現在は第2期の建設が開始され、第3期のワークショップが進行している段階にある。

 ワークショップは住民・対策室・専門家によって進められてきた(専門家としては建築設計を担当する現代計画研究所・大阪事務所、及び筆者のグループが参加している)。各年度の参加住民の選定、住戸の位置決め、住戸プラン、共用空間の計画、住棟の色決め、コミュニティ運営など、再生事業のすべての主題はワークショップの場面において話し合いの対象となる。住民の位置、行政の権限、専門家の権威は、互いに区分された定義が与えられ、効率的な分担関係を担うことが想定されてきた。しかし、ワークショップのプロセスは主体の定義を「越境」させ、相互の理解、反発、衝突、共感などの関係を生み出してきた。ここでは既成技術の自動操縦は停止され、あらゆるテーマが浮動しはじめる。

 第1期・15戸の住棟は住民によって「秋桜」と名づけられた。すべての住戸は異なるプランとなった。nDK型だけではなく、続き間型を基調とした平面が多い。3階レベルの南側に空中街路が設置された。これを歩いていくと、前庭をもつコモンルームがある。空中街路は第2期、3期の建築へと連続していく。1階部分には予期せぬボイドが生まれた。分節された住棟、変化に富むファサード、開放的な住戸がつくる表情は、周辺地域に対して融合性を示し、同時に適度の刺激を与える。街が立体化したかのような景観が生み出された。これから新しい住棟が少しずつ付加され、街は少しずつ成長する。(興味をお持ちの方にはワークショップのフル・レポートを差し上げます。)




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