1998/4 No.11 日本都市計画学会 関西支部だより

今、復興は
灘中央地区のまちづくり〜職人(プロ)の街と防災まちづくり〜

上山  卓 コー・プラン


商業地と住宅地の構成
 灘中央地区は神戸市灘区の西部に位置する面積約35haの地区であり、東西に走る山手幹線を挟んで商業地が形成され、その両側に住宅地が広がっている。
 商業地は"水道筋"の名前で親しまれ、「東の台所」として庶民的な市場と商店街が一体となった商業集積を形成し、住宅地は戸建住宅を中心とした情緒ある市街地を形成してきたが、その一方で、インナーシティ問題が指摘されていた地区でもあった。
 
 
商業者の活動から地区全体へ
 震災前は"商業の活性化"の視点での検討が行われていたが、その検討を通じて、「地域の人々と一体となったまちづくりが必要だ」という声がでるようになっていた。そして、震災では数多くの住宅が倒壊し、商業地も幸い火災等は発生しなかったが、かなりの被害をうけ、「住環境整備」「商業地の活性化」等の問題が一挙に噴出したといえる。
 そして、昨年11月に「灘中央地区まちづくり協議会」が設立され、まず手掛けたのが、「まちの再建状況、まちのいいところ・よくないところ」などをチェックする"まちの点検隊"の実施である。2月の寒い日の2日間約60名がまちを見て回り、いろいろな発見があった。特に商業者から「こんなところがあるとは知らなかった」といった感想がだされ、今後のまちづくりを考える良い契機になった。
 
商業者と住民のコミュニケーション
 このようにまちづくりへの関心が高まりだしたなか、協議会としてさまざまな活動を行っている。
 活動拠点としての「まちづくりハウス」の開設、「シドニー大学生との意見交換」、花の苗木を配布する「花と緑のまちづくり」や「なだのまちクリーン作戦」の実施、「なだ桜まつり」への参加など、商業者と住民が一体となった活動を展開しており、年間の定期的な活動として定着しつつある。
 そして、「"活力ある"商業と"心なごむ"住環境の共生」を目標に、具体的には商業部会と住宅部会を設置し、具体的な検討を行っている。
 
“職人(プロ)の街”と“防災まちづくり”
 商業部会は、各商業団体からだされた意見などをもとに作成した「灘中央地区/商業地のまちづくり構想(案)」に基づいて、"職人(プロ)の街"をめざしてさまざまな検討をすすめている。
 一方、住宅部会は、テーマの一つとして「コミュニティの育成と防災まちづくり」をかかげている。
 昨年10月に当地区をモデルとして実施された「こうべ市民安全まちづくり大学」では、協議会のメンバーも加わり、ワークショップ形式で"防災マップづくり"が行われ、その時の意見なども参考にしつつ、まちの骨格としての「防災まちづくり」をすすめようとしている。
 そういうなかで、神戸市から提案があったのが今春から実施される「(仮称)防災まちづくりスポット創生事業(空地活用事業)」である。この事業は、住宅等の再建がすすむなかで、今なお市内に多く残る空地を市が借り上げ、日常は地域コミュニティの場として、災害時には地域防災活動の拠点となる空間づくりをめざした空地活用策の一つである。
 この事業では、空地の借り上げと整備に対して神戸市から補助がでるが、管理は地域の人々が行うことになっており、利用方法も含めて、地域コミュニティの存在が重要となってくる。そして、その受皿の一つとなるのが「まちづくり協議会」である。
 灘中央地区では、目に見えるかたちでの具体的な展開がなかなか見つからなかったこともあり、すぐにその提案にのり、現在、その候補となる空地の選定を行うとともに、具体的な利用や管理に向けて検討をすすめている。
 会議では活発な議論が交わされており、「あの人なら土地を貸してくれそう」とか「あそこはちょっとむずかしいんじゃない」といった、さすが地元ならではという多くの情報がよせられている。
 このように、まちづくりに対する取り組みが徐々にひろがっており、今後も、「商業者」と「地域住民」の交流と地域のコミュニティをいかした息のながい活動を少なからずお手伝いしていきたい。



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