1998/10 No.12 日本都市計画学会 関西支部だより

小特集
神戸の多自然型川づくり

田辺 佳彦 神戸市建設局下水道河川部計画課


 近年、街づくりにおいて豊かな自然や美しい景観に対する人々の関心が増大し、とりわけ水辺空間は水とみどりの貴重なオープンスペースとして大きな期待が寄せられている。

 このような中、河川事業は単に治水や利水のみならず、生物の良好な生育環境に配慮しつつ、あわせて美しい自然環境を保全し創出する「多自然型川づくり」が全国的に進められている。神戸市の河川においても西北神地域を中心に整備に取り組んでいるが、ここでは伊川の例について紹介する。

 伊川は、二級河川明石川の支流であり、神戸市北区の「しあわせの村」付近を源とし、明石城公園の北側で本流と合流する延長15.7KMの河川である。流域の周辺は、昭和50年頃より「西神ニュータウン」などの大規模な宅地開発や区画整理事業が行われ市街化が進んできたが、中流部から上流部にかけては、田園風景が残り、市内でも比較的自然に恵まれた河川でもある。特に上流部には国宝の太山寺があり、その周辺の山々は三身山と呼ばれ、コジイやウバメガシなどを主とした照葉樹林からなる神戸市でも貴重な原生林が形成されている。また、滝が点在する渓谷もあり、散策路からは壁面に魔崖仏が刻まれた滝などを見ることができる。

 伊川の河川改修は昭和55年より下流部から着手し、当初は治水の安全を第一目標に、コンクリート護岸で固めた直線的な河川をつくってきたが、平成2年度からは整備のあり方を見直し、周辺環境に調和した河川整備を目指すことになった。伊川の特徴や周辺の土地利用、住民要望などに合わせて、上・中・下流でゾーンニングを行い整備計画を立てた。

 「多自然型川づくり」は、このうち中流部の〈豊かな実りと自然のゾーン〉において実施している。改修にあたっては、安全の確保を第一に、残された自然を極力保存するとともに周辺に残る里山に調和した自然を創設することとした。また、同時に、人々が容易に水辺に近づき、自然にふれ、景観にも優れたやすらぎの場も作り出していきたいと考えた。このため、@防の緩勾配化や盛土被覆、ニ野面石や木杭による空隙の多い低水護岸工、B澪筋を尊重した低水路の蛇行、A魚の遡上に配慮した多段式落差工といった工法を採用している。

 整備後3〜4年の追跡調査では、緩勾配の土堤や高水敷には低性の植物が繁茂し、低水路は瀬や淵が自然の力で形成されつつあり、全体的には予想以上の多様な生物が確認された。また、親水性に配慮した整備を行ったところでは、川祭りが開催されたり、河川愛護団体により草刈りやゴミ拾いが行われるなど、市民のレクリェーション空間としても大いに利用されている。しかし、生物の生息環境を守るとといった点からは相反する面もあり、身近な自然を人々に体験してもらうことと、生態系への配慮とのバランスを如何に取っていくかも課題となった。

 「多自然型川づくり」は工事が終われば完了ということではなく、自然の作用にも期待しながら、また、追跡調査等の結果を踏まえて試行錯誤を繰り返しながら進めていく必要がある。

 今後とも住民の方々の協力を得て、「神戸の多自然型川づくり」を推進していきたいと考えている。




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