1998/10 No.12 日本都市計画学会 関西支部だより

小特集
神戸市におけるエコロジー建築への取り組み

磨家 孝明 神戸市住宅局営繕部営繕課


1.震災前におけるエコロジー建築への取り組み
 神戸市は、1992年6月にリオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミットに笹山幸俊神戸市長が参加し、「神戸市のまちづくりと環境保全」について報告したことを契機として、エコロジー建築への取り組みを開始した。
 1993年に、庁外の専門家も含めた「神戸市エコロジー建築開発チーム」を設置し、神戸市のめざすエコロジー建築についての基本的な考え方をまとめるとともに、「環境にやさしく」「自然と親しく」を2つのテーマとして、建築実務者向けに「神戸市エコロジー建築マニュアル(基本編)」を作成した。
 また、エコロジー建築のモデル工事(地域福祉センター、市営住宅、消防署など)を実施し、そのうち2件の地域福祉センター(六甲山と瀬戸内海にはさまれた温暖な密集市街地に位置する小野柄地域福祉センターと、六甲山より内陸の寒冷な農業地域に位置する淡河地域福祉センター(児童館を併設))については、専門家、地域住民の代表、神戸市職員が参加したワークショップを実施し、そこで出された提案の多くを実際の設計に取り入れた。ワークショップにおいては、特に地域住民の方々に、エコロジー建築をつくるうえで最も重要な、その地域特有の気候、植生など、役に立つ情報を得ることができた。
 これらのモデル工事については、工事完成後、神戸大学の協力のもと、エコロジー建築の各種手法の効果測定を実施し、自然換気について、一定の効果が確認されている。
 1994年には、一般市民に神戸市のエコロジー建築への取り組みについて紹介するためのリーフレットも作成した。
 
2.震災時にエコロジー建築が果たした役割
 1995年1月の阪神・淡路大震災では、ライフラインの途絶が市民生活や復旧活動に大きな影響を及ぼすこととなったが、そのような場合でも、自然との共生をめざしたエコロジー建築の各種手法が大変有効であることが実証された。神戸市役所における井戸水の利用や自然換気用小窓の設置(超高層建築物(1号館)における空調の故障に対応)などがその例として挙げられるが、この他、雨水利用や緑化による延焼防止などの効果も十分認識されるようになった。
 
3.震災を踏まえたエコロジー建築への取り組み
 神戸市では、震災の貴重な経験を踏まえ、エコロジー建築の第3のテーマとして、防災の観点を加え、公共建築物の防災機能強化のため、雨水・井戸水利用、太陽エネルギー利用、自然採光、自然換気など自然のもつ力を活かした、ライフラインに頼り切らない公共建築の実現(公共建築物における「水とエネルギーの確保」)をめざしている。
 具体的には、水に関しては、建物地下の雑用水槽に貯めた水(雨水、プール水等を利用)のトイレ洗浄水や散水への利用、井戸の設置、プール水の消火用水への利用など、平常時の利用も図りながら、設計に取り入れている。また、エネルギーに関しては、防災拠点施設や避難施設等において、自家発電設備の増強(72時間対応)や太陽光発電設備、太陽熱給湯システムの設置などを採用している。これらについては、学校、区役所、消防署の建替え工事で実際に採用され、既存建物における改修工事なども実施している。
 神戸市では、震災の教訓を踏まえ、今後も積極的に、環境にやさしく、災害時にも有効なエコロジー建築を推進していく予定である。



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