1998/10 No.12 日本都市計画学会 関西支部だより

小特集
貝塚・「トンボの池」

白木  茂 市民の森に自然生態圏をつくる会・世話人


 「トンボの池」と聞いてトンボの遊具のある大阪府営蜻蛉池公園を連想する人も多いが、この「トンボの池」は、臨海埋め立て地の貝塚市「市民の森」(都市公園:2.4ha)の中にある。

 「トンボの池」は、護岸は石と丸太で構成され、水辺は緩傾斜で水辺植物を植え多様な生態的空間をめざしている。一見何の変哲もない小さな池(面積100u、水深60cm)であるが、外見の特異性の無さは景観的調和、生態的調和の証左であり、水道水利用、コンクリートやゴムシート使用、循環浄化の電力消費、動植物を他地域から移植移入といったビオトープの例が多い中で、住民参加で「環境へのやさしさ」を追求したこの「トンボの池」は小さいが特異な例と言える。

 この貝塚「トンボの池」の特徴は、「雨水循環利用」「住民参加創造」「地域素材専用」にあるが、人間がつくりすぎないように「自然がつくるのを少し手伝うだけ」と気をつけながらつくられただけに、外観だけでは分かりにくい。まず雨水を効率的に集水貯留し循環利用するために、地上に見える池以外に貯水タンクが2ヶ所地下に設けられている。この地下タンクは天井部からの浸透雨水以外に暗渠集水管によっても雨水が集められ、これらの雨水は排水されることなく自然落差を利用して礫(微生物)や植物で浄化されながら循環利用されている。また池底も粘土貼りで土中へわずかに水が浸透するため、水底の水質悪化を防止している。

 「トンボの池」はボランティア団体「市民の森に自然生態園をつくる会」(事務局:貝塚市立自然遊学館)によってつくられた。専門知識を持った住民が構想段階から積極的に参加し、計画案の作成、資材の調達、施工、完成後の維持管理の大半を住民が引き受けた。施工は人力のみでスコップ、ツルハシ、クワ、トンガ、ゲンノウ、カケヤ、一輪車などを使って床掘り、盛土、粘土貼り、石積、杭打ち、植栽といった作業が行われ、タタキ、ケンド、ヨイトマケといった地域の土木用具も手作りで再現使用された。参加したボランティアは土曜日曜を中心に約800人である(平成9年4/26〜10/24)。

 池を構成する材料は貝塚産に限定されている。池底の粘土は三ヶ山から赤粘土を、木材は大川からヒノキの間伐材を、石は市内で長年使われていた古い庭石を、植物は市内の池や川や山からと、全て貝塚市内から集められた。素材とともに昆虫や微生物が近木川水系(≒貝塚市域)以外から入ってくることを避け、遺伝子の地域的攪乱を防止するためである。

 完成した「トンボの池」に飛来するトンボの個体数は多いが、種数は近隣に自然型のため池が無いためか非常に少ない。それでも完成後すぐにウスバキトンボ、アオモンイトトンボ、ギンヤンマ、シオカラトンボの羽化が確認されショウジョウトンボ、コノシメトンボなどの飛来する姿が見られている。

 この「トンボの池」は平成9年につくられたが、引き続き平成12年までに「ドングリの森」「バッタの原っぱ」「浜辺の植物ブロック」をつくり、市民の森の中に700uの自然生態園を完成させる予定となっている。




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