1998/10 No.12 日本都市計画学会 関西支部だより

委員会から
1996年度第1回都市計画シンポジウム


1)シンポジウムの概要
テーマ:ファームウェアとしての都市づくり−都市計画・まちづくりにおける情報システムの新展開−
話題提供者:川崎 寧史(京都大学工学部建築学科)
福島 徹(神戸大学総合情報処理センター)
山本 茂博(兵庫県都市住宅部都市政策課)
渡瀬 誠(大阪市建設局区画整理部事業企画課)
コーディネータ:榊原 和彦(企画・事業委員長 大阪産業大学工学部)
日 時:1997年12月15日(月)14:00〜16:30
場 所:OCATホール
参加者:60名

2)趣旨およびパネルディスカッションの概要
 [報告:榊原 和彦 企画・事業委員長(大阪産業大学工学部)]
 《趣旨》
 今年度および来年度に行われる4回の都市計画シンポジウムのメインテーマは、「ファームウェアとしての都市づくり」である。"ファームウェア"とは、ハードウェアとソフトウェアが融合し、一体として分かち難くなった物と解することができる。都市は、そのようなものとしてつくられるべきではないかという問題意識のもとに、シンポジウムを繰り広げる予定である。
 第一回目の今回は、「都市計画・まちづくりにおける情報システムの新展開」をテーマとしている。ネットワークに基盤をおいて展開する情報システムによって、今、これまでとは異なる様相をもって発信・受信され、蓄積される"情報(=ソフトウェア)"が、"都市(=ハードウェア)"そのものや"都市づくり、まちづくり(=ハードでもソフトでもある)"とどう関わってファームウェア・システムを形成し、それらをどのように変革していくかを論じることを目的としている。
 想定された主要な論点は以下の通りである。
情報ネットワークは、都市計画・まちづくりにどのような変化を与えるか?
行政は、新しい都市情報システムの構築に取り組む必要があるのではないか?
都市あるいは行政は、どのような情報をどういう手立てで生み出し、市民に提供すべきか?
都市あるいは行政と市民との双方向的なコミュニケーションは可能か?
 
 《基調講演および話題提供》
 川崎寧史氏(京都大学工学部建築学科)は、「都市づくり・都市利用と情報システム」というテーマの下に、都市において情報システムを利用する際にどのような都市情報データ、運用システム、コミュニケーション・システムがあるかを述べ、都市データの緩やかな結合が必要であるが、必ずしもうまくいっておらず、その理由は技術的問題であるよりも社会的な問題であることを指摘した。そして、まちづくりにおいて情報システムを活用するには、組織間でデータの共有・結合を進めるなどして情報をリンクさせ、都市計画、都市の維持管理、都市利用などに使いこなすべきことを述べた。
 福島徹氏(神戸大学総合情報処理センター)は、「GISを都市計画に応用する」というテーマで、GISには、地図情報システム(図面管理システム)と地域分析システム、さらには情報の加工・生成システムの側面があり、これを都市計画における意志決定支援システムとして使いこなすための留意点として目的の明確化や情報の更新・維持管理に対する見通しを持つべきことを述べた。その上で、震災研究におけるGIS利用の実状、西宮市、城陽市におけるGIS利用事例を紹介し、GISを利用するには何から始めるべきかを論じた。
 渡瀬誠(大阪市建設局区画整理部事業企画課)は、「都市計画・まちづくりにおける情報システムの新展開」というテーマで、都市計画を取り巻く現状と情報システムを求める背景について、まず、説明した後、まちづくり情報に関する最近の流れとして、有効に情報伝達を行うための情報メディアの選択及び活用の必要性の高まり、まちづくり情報交換の双方向化、リアルタイムなまちづくり情報交換、について論じた。そして、まちづくり情報に関する今後の課題として、まちづくりの教育、制度・まちづくり手法自体の改善が必要であることを指摘した。
 山本茂博氏(兵庫県都市住宅部都市政策課)は、「景観誘導におけるCGをめぐる動き」というテーマの下で、兵庫県が、平成5年度から改正「景観の形成等に関する条例」に基づいて、一定規模を超える大規模建築物等の景観に及ぼす影響に関し、CG画像の作成による景観予測を義務づけ、それによって協議・誘導を行っている事例が示された。さらに、阪神淡路大震災からの復興にともなって新たに生まれてくるまちなみ景観を、簡易に、かつビジュアルに予測・表現できる景観シミュレーションシステム(愛称ココス)を(財)兵庫県住宅建築総合センターと共同開発し、県内3ヶ所で供用している状況を紹介した。
 
《ディスカッション》
 討議では、本シンポジウムのテーマのもとで、まず、情報システムを情報利用システムの問題と情報の視覚表現とコミュニケーション・システムの問題に分けて論じる必要があることが指摘された。そして、前者に関し、情報システムが都市づくりにどれだけ役に立ったか評価するシステム、空間データ基盤、生きて活用される柔軟なシステム、などの必要性が論じられると同時に、現時点では種々の限界があることを認識しつつ活用すべきことが指摘された。後者の視覚化については、その有効性は広く認められているところであるが、必要に応じた"よきCG"づくり、インターネットを通じたコラボレーションなどの活用システムの構築が肝要であることなどが述べられた。



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