1999/4 No.13 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
過疎地のまちづくりに求められること

安井 博和 兵庫県但馬長寿の郷総長


 単に高齢者のためのまちづくリという視点と、過疎化と高齢化が同時に進行している地域にあっての視点は異なるのではないかと思われる。後者にあってはその視点のポイントに、本来人が生活を営む上で存在してはならない孤立感、疎外感を拭う事が重要になると思われる。

 過疎化と高齢化が同時に進行している地域の日本全土に占める割合が如何程になるのか詳細は不明であるが、少なくとも兵庫県北部の但馬はその典型的な地域であリ、その面積は東京都と同じであって兵庫県土の25%を占めながら、人口は県総人ロの4%弱の20万人強でしかなく高齢化率は25%を超えている。過疎化・高齢化が進行している但馬にあっては65歳以上高齢化率の伸びはむしろ鈍化の傾向にあリ、特徴的な事は65歳以上の中でも75歳以上、80歳以上の超高齢者の占有率が上昇している事であリ、この傾向は但馬に限った現象ではなく、広く日本全国において共通かと思われる。よりミクロ的に見れば但馬を構成する自治体の夫々において、夫々の町の中心部から離れた辺縁の集落になる程に高齢化率が高く、また高齢者の独居・高齢者のみの夫婦という世帯構成が多くなっている。

 アンケート調査によれば、そのような高齢者の日常生活における外部との接点はテレビ・ラジオを介しての場合が多く、人と人との温もりのある接点は稀薄になる傾向にある。過疎地の自治体においては、その町の中心部から辺縁の集落まで10キロ、或ほそれ以上の距離がある。この広さの克服には移動;伝達;人の情けの3つの手段が考えられるが、これらの地域にあっては、従来型の若者中心の社会システムではなく、徹底した高齢者中心の社会システムをこの克服の3つの手段に加味されるべきであると思われる。まちづくリの基本のひとつにサービスを提供する側の論理によるのではなく、サービスを受ける側の論理に従うべきであるという事である。日常生活支援サービス、或は高齢者にとって重要な医療、介護のサービスが、受ける側の論理に従って提供される流れをつくりながら、一方で疎外感・孤立感の排除のための拠点施設を夫々の集落内に設け、絶えず人と人との接触点を保持し続ける仕掛けが極めて重要であろうと思われる。

 “誰かのために自分はある”と感ずる時に人は最も生きがいを覚えるという。過疎化と高齢化が同時に進行している地域にあってのまちづくりの基本理念ではなかろうか。




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