1999/4 No.13 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
人にやさしい住まいづくり

児玉 善郎 産業技術短期大学


 高齢者が地域で安心して住み続けられる住まいが求められている。「安心して住む」こととは何かを問い直してみると、安全で快適な生活を実現するハードとしての建物が整備されることが前提となるが、それとともに自分に何かあったときにサポートしてもらえる、誰かに見守られているというソフトな人的対応があることが重要である。それはつまり、人のやさしさを住まいにどう融合させていくかという問題ではないかと思う。わが国においては、これまで家族に見守られ、支えられて老後の生活を送るというのが一般的であった。しかし、少子高齢化の進行により単身、夫婦のみで老後の生活を送る割合が飛躍的に多くなってきており、家族ではない第三者によるやさしさに守られた住まいが今後必要とされるわけである。
 阪神大震災の被災地では、仮設住宅から復興住宅に至る様々な取り組みの中で、このやさしさのある住まいづくりの萌芽的な取り組みが実践されている。以下にそのいくつかを紹介したい。
 
<ケア付き仮設住宅>
 今回の震災後はじめて供給された、単身や夫婦のみでの生活に不安を抱える高齢者・障害者に対応した仮設住宅である。建物の特徴としては、概ね10〜12戸が一棟となり、6畳一間とトイレ・洗面台からなる個室と共用のダイニングキッチン、浴室により構成されている。重要なのはソフトな運営上の特徴で、入居者の生活を見守り、必要に応じて生活の手助けを行うスタッフが24時間体制で常駐していることである。部屋で気分が悪くなった時に緊急に対応してもらえたり、一時的に体調を崩した時に生活を手助けしてもらえる安心感があることが入居していた高齢者に高く評価されていた。また、自分の部屋から出てすぐのところに共用スペースがあり、入居者同士が自由に集い、話をし、時には助け合うといった生活が繰り広げられている点も評価できる。
 
<コレクティブハウジング>
 上記のケア付き仮設住宅の取り組みを被災した高齢者の恒久的な住まいに活かそうと専門家グループと神戸市が協力して検討活動を行った結果、復興公営住宅において初めて「コレクティブハウジング」が供給されることになった。神戸市営で2カ所87戸、兵庫県営で8カ所232戸が供給された。入居者同士がふれあい、助け合いながら生活できるように、共用空間として、キッチン、ダイニング、リビングルームなどを設けているのが特徴である。ケア付き仮設住宅とは違って常駐スタッフはいないが、共用スペースがあることにより、入居者同士のふれあいや地域のボランティア等による食事会などが可能となっている。入居が開始されてから早いところでもまだ1年が過ぎたばかりなので、団地によっては共用スペースが十分活用されていないところもあるが、時間の経過とともに徐々に利用されるようになってきている。
 
<グループハウス>
 尼崎市内に2カ所あったケア付き仮設住宅の入居者の暫定的(入居期間5年以内)な住まいとして、兵庫県住宅供給公社と尼崎市が協力して供給した高齢者住宅である。建物の形態および生活援助員が24時間常駐しているという運営方式は、ケア付き仮設住宅とまったく同じである。建物は、1棟18戸で、9戸毎に1カ所の共用のダイニングキッチン、浴室、トイレが用意されている。これまでわが国にあった、シルバーハウジングやケアハウスなどともまったくことなるコンセプトの高齢者向け住宅として位置づけられる。具体的には、小規模な単位であること(9戸×2ユニット=18戸)、ハードの整備費用、運営費用のどちらにおいても、特別養護老人ホームなどより安く抑えられているにも関わらず、入居者に対しては質の高い生活空間と柔軟なサービスが提供できているという点である。
 
今後、これらの事例を被災地だけの取り組みに終わらせず、21世紀におけるわが国の高齢者住宅の一つのモデルとして一般化していくことが期待される。



前ページ


13号・表紙


次ページ

Copyright(C)1999 (社)日本都市計画学会関西支部