1999/4 No.13 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
Webページ「障害者アクセスマップ IN 関西」−バリアフリー社会への人材育成に向けて−

上田 学 大阪教育大学附属天王寺中学校教諭


 「障害者アクセスマップIN関西」というページが,インターネット(下記のURL)に公開されて約1年が過ぎた。製作したのは,大阪教育大学附属天王寺中学校の3年生である。
http://tenko.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/tennoji/tec&home/gijyutu.htm

 アクセスマップの製作は,このような授業の発展としてスタートした。その基礎となるのが,再生車椅子の走行テストを兼ねた街での車いすの体験走行である。5人〜6人の生徒が1班となって車いすに乗り,現実の街に繰り出す授業を実施している。切符を買って電車に乗り,駅構内のショッピングモールを車いすで試乗する。実際の街が車いす使用者やその他の障害者にとって使いやすいかなど,人ににやさしい街づくりの実態を調査して行く。班の生徒は,個々にカメラ,ビデオカメラ,メジャー,傾斜角度計など持っており,バリアフリー社会の必要性を考えながら,気づいた点は写真やメモでチェックする。券売機の点字表示や点字ブロック,車いすが通れる改札口の幅,エレベータやエスカレータの有無,車いす用のトイレの状況などといった駅の設備だけでなく,街角の自動販売機の商品取り出し口の高さや公衆電話の使いやすさ,放置自転車や迷惑駐車の影響など,生徒は実に様々な項目をチェックをしてくる。そのまとめを,当初から紙面で行っていた。アクセスマップの基本的な製作方法は,これまでの紙面での方法をWebページに置き換えたものなのである。

 1996年,本校もインターネットが接続された。著者は,かねてからインターネットの情報公開性を最大限に活かす方法として,アクセスマップの製作を考えていた。ついにその時が来たのである。走行体験の授業によって養われた人にやさしい街づくりの視点を,生徒が通っている自宅の最寄り駅に持ち込んだ。夏休みの課題として,生徒は自宅近くの駅を調査し,その結果を写真と文章によって紙面にまとめるのである。各駅のページの作製は,2学期の授業で実施した。各ページは,切符を購入して改札を入り電車に乗り込むまでのコースを基本に,様々な設備の情報を調査し公開している。設備の情報は,出来るだけ主観的な評価を避け,何個や何ヶ所といった具体的な数値を表記するように指導し,情報の客観性を保つようにした。また,生徒個々が感じた主観的な評価は,感想の項目として表現させている。全体としては,障害者の視点から,関西の大手私鉄と大阪市営地下鉄の130の駅について,アクセシビリティのデータベースがアクセスマップである。

 さて,これらの授業において最も重要なことは,「バリアフリー社会をつくるためには,設備を作る側にも運用する側にも,心のバリアフリーが必要である。」ということに生徒が気づくことにある。出入り口に5cm以上の段差があって車いすが出入りできない車いす用のトイレ。呼び出しボタンの前に灰皿やゴミ箱を置いているため,ボタンを押せなくなっている車いす用エレベータ。車いす用スロープや点字ブロックを使用不能にする放置自転車や迷惑駐車。実社会の矛盾点を見つけることで,設備を設計する場合も運用する場合も,障害者の生活や行動に対する理解,すなわち心のバリアフリーが重要であると気づくようになってきたのである。

 21世紀の超高齢社会を支えるのは,現在の中学生などの若者である。バリアフリー社会や人にやさしい街づくりなどを実現できるか否かも,心のバリアフリーを持った人材が増えていくことがポイントとなろう。「障害者アクセスマップ」の製作という授業を通して,心のバリアフリーを持った人材に育って欲しいと願っている。




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