1999/4 No.13 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
人にやさしい店づくりと地域との共生

松本  猛 日本チェーンストア協会関西支部事務局長・イズミヤ


(1) 流通業を取り巻く環境の変化
 欲望の爆発の世紀であった二十世紀から、資源と環境の巨大な壁がたちはだかる21世紀を迎えようとしている今日、私共流通業界を取り巻く環境も大きく変化しようとしている。
 バブル崩壊以降、景気は低迷を極め、今や企業、個人を問わず"バランスシート"の調整が最重要課題となっている。
 前年度の個人消費は、戦後初のマイナスとなり、消費も"モノ"の消費よりモノでない消費(非物販)が60%弱を占めるという、消費構造の転換期を迎えている。つまり、経済の"サービス化"が進展しているのである。
 これは、宅配や代行業等のサービス業がここ五年間で50%近く売り上げを伸ばし、百万人の雇用を生み出していることで証明される。
 一方、競争環境は益々激化し、従来の業種業態間競争や地域間競争も含め、競争相手が特定出来ないという"業際間競争"も顕著になっている。例えば、新巻鮭の売上げは、我々流通業界の大手より宅配業者の方が多かった、これが業際間競争である。これは金融業も例外ではない。さらに、規制緩和により外資の参入も大きな脅威になろうとしている。
 また、わが国の人口構造も、有史以来初体験となる少子・高齢社会を迎えようとしており、人口減も予測されている。

(2) 流通業存続条件
 このような時代に、流通業が生き残り、発展する手段は、唯一"お客様の支持を得る"ことに尽きる。消費者に最も近い私共の原点にかえり、如何に、お客様に満足して頂けるか、を実現しなければならない。
 四年前の、悪夢のような阪神・淡路大震災で、万難を排して店を開ける、生活必需品を調達し販売する、という小売業の使命。地域の要請にお応えして、水やパン、毛布等の応急物資をお届けする。電話やファックスを開放し、地域のコミュニケーション・センターとしてご利用頂く。結果として、「流通業は水・電気・ガスに続く第四のライフラインである」との評価を頂いたことは私共の望外の喜びであった。私共は、流通業の社会的使命が如何に重大か、地域に密着した社会的ネットワークの構築が如何に大切か、実際に学んだ。

(3) 地域との共生
 さて、このような時代の転換期に、地域の生活物資の供給拠点として機能することも私共の重大な使命であるが、お客様の使い勝手のよい、サービスセンターとして機能することも重要である。
 21世紀は環境対応と社会貢献が企業の評価基準になると考えている。企業は自己規制責任を持つとともに、社会に対する積極的関与責任も持たねばならない。地域社会との共生とは、
  1. ノーマライゼーション(健常者とハンディキャップのある方との共生)
  2. インターフェイス(より良い社会の為にお客様と製造者と流通業が顔を合わせて)
  3. コミュニティー・ファースト(地域づくりに優先して取り組む)
  4. エンバイロンメント(環境をやさしく保護してゆく)
の4つが確立されなければならない。特に、高齢者やハンディキャップのある方が快適に利用できる店づくりは急務である。

(4) ひとにやさしい店づくり
 私共は、ハートビル法に適合した、ハードな部分での施設づくりは当然であり、同時にソフトな部分での取り組みも重要であると考えている。
 誰もが利用しやすい店づくり、人にやさしい店づくりを、営業活動の一方の重要な柱として位置付けている。
 まず、人にやさしい施設の充実では、
  1. 車椅子やカート
  2. 障害者用や高齢者用のトイレ
  3. 車椅子優先レジ
  4. 点字ブロックにインターホーンを設置
  5. 段差のないスロープ
  6. 車椅子専用駐車場
  7. 介添え者呼び出しボタン
    (店頭やエスカレーター横に介添え希望の方、気分が優れない方むけにインターホーンを設置)
  8. ご気分が悪い方の為の休養室<
  9. 盲導犬受け入れステッカー
等を設置してゆく。
 また、ソフトな部分は未だ緒についたばかりであるが、福祉ビデオやマニュアルを作成し、視聴障害をお持ちの方や車椅子をご利用のお客様への対応教育を従業員対象に実施している。
 殊に、従業員の手話通訳の訓練が急務であると考えているが、思うように進展していない現状である。
 但し、盲導犬育成のための店頭での寄付活動は十数年に及び、お客様の支持と理解も深くなり、定着している。

(5) より良き企業市民を目指して
 さらに、地域への支援活動として、障害者の方が作られた縫製品や陶芸品の販売、福祉園と提携しての福祉バザー、消費者の福祉問題懇談会の開催やふれあい介護相談の実施など、店舗でなければできないような活動も実施している。
 今後は、地域文化やスポーツ活動支援、小学生や大学生を対象とした学外研修の実施など、私共は可能な限り、地域社会に貢献し、地域と共生してゆきたいと考えている。
私共流通業界は、企業の理念として「お客様第一」を貫き、常に顧客満足を追及し、社会に対して貢献できることこそが、地域の企業市民として認知され、地域社会の発展のお役に立てることが最終の目標であると考えている。未だ"道遠し"ではあるが、一歩一歩着実に前進してゆきたい。



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