1999/4 No.13 日本都市計画学会 関西支部だより

委員会から
都市計画シンポジウム
1998年度第1回都市計画シンポジウム


1) シンポジウムの概要
テーマ:ファームウエアとしての都市づくり−都市の優しさと福祉のまちづくり−
話題提供者:真田 幸直 (大阪市計画調整局企画主幹)
尾上 浩二 (自立生活センター・ナビ゙代表)
藤村 保則 (中央復建コンサルタント椛謌齔ン計部技術部長)
岩田三千子 (摂南大学工学部建築学科助教授)
コーディネーター:三星 昭宏 (近畿大学理工学部土木工学科教授)
司  会:榊原 和彦 (企画・事業委員長 大阪産業大学工学部)
日 時:1998年7月29日(水)14:00〜16:30
場 所:大阪市立大学文化交流センター・ホール
参加者:50名

2) 趣旨およびパネルディスカッションの概要
[報告:三星 昭宏 企画・事業委員(近畿大学理工学部)]
《趣旨》
 都市におけるハードとソフトを別々に整備する時代から、その両者を融合し、一体として何倍もの機能を発揮させる整備を行うファームウェアとしてのまちづくりをシリーズテーマとして98年度第一回のシンポジウムを行った。
 今回は都市の優しさと福祉のまちづくりをとりあげた。福祉のまちづくりも施設づくりが目的ではなく、都市の「やさしさ」を具体化し、都市における生活の質をあげてゆく過程であるといえる。大阪を中心として、これまでの福祉のまちづくり施策を振り返り、これからの施策レベルアップの方向を論議した。その中でファームウェアとしての都市づくりとは何かを考えてみた。
《講演要旨と討論》
 司会の榊原和彦氏(大阪産業大学)は、本シリーズの趣旨と今回の関係について述べた。「しっかりした」ハードウェアと「柔軟でやさしい」ソフトウェアを組み合わせて強力なファームウェアをつくりあげることが福祉のまちづくりの基本思想であることを示した。
 真田幸直氏(大阪市計画調整局)は、欧州における高齢者・障害者施策について、生活と交通を軸に解説し、我が国のまちづくり課題を鳥瞰した。とくに、欧州における在宅福祉と外出における福祉のコンビネーションを重視し、鉄道・バス・スペシャルトランスポートサービス・サービスルート・ショップモビリティなどの役割と事例について述べた。それをまとめ、日本の福祉施策で、いわゆる介護福祉と福祉のまちづくりに脈絡を持たせる必要性について指摘した。これらは従来の福祉のまちづくり整備論からさらに前に出る計画思想の提起であり、参加者に福祉のまちづくりの今後の方向性を指し示した。
 尾上浩二氏(自立生活センター・ナビ)は、まず障害当事者(車いす)として自分のある日の行動記録を示し、その中で健常者ではわかりにくい通行性と情報性の一貫性欠如がどのような困難をもたらしているかを述べた。まさに当事者が故の指摘であり、貴重な提起を行って参加者にリアルな問題認識を与えた。また、大阪市の地下鉄や民鉄の駅について整備率などのデータを示した。大阪はこれまでの運動で45%の駅がエレベーター対応をしており古い駅の多い中で大きな成果をあげているものの、依然未対応駅も多いことや、情報、わかりやすい動線およびトイレなどについての立ち後れについて述べた。これらを通じてモノづくりと情報、人的支援の関係について述べた。
 藤村保則氏(中央復建コンサルタント(株))は道路設計の立場から、これまでの施策をレビューし、新しい工夫に関する論点を述べるとともに交通の場における人的支援と組み合わせた設計のあり方に触れた。豊富な設計経験を図面を用いて述べたが、中でも泉北高速和泉中央駅と駅前ターミナルの南北分割型当初案を変更し、全体一体整備により最初からバリアフリーを達成させた経緯は圧巻であった。当初の設計でシンプルかつ明快にバリアフリーを確保する重要性を述べた。氏はまた、道路設計におけるフラット構造の考え方および障害となりがちな排水問題克服などの技術的説明を行った。
 岩田三千子氏(摂南大学工学部)は建築設計の立場から、とくに視覚障害者に対する情報支援方法について、デバイスと人的支援のコンビネーションについて述べた。自身がアンケート調査と研究した事例により、色の見えをめぐる諸問題と、点字ブロックの形・色・引き方などについて現状と今後の方向について述べた。氏は建築領域を専門としながらそれにとらわれずに道路等の屋外空間の計画・設計について研究しており、緻密な分析と観察により見逃しがちな問題を順を追って示した。また、これらを通じてまちづくりとソフトな施策のコンビネーションの重要性について述べた。
 討議ではモノづくりにのみ頼り、それも系統的でない現在の福祉のまちづくりの問題点が指摘され、また都市計画におけるレベル調整問題などについて討論が行われた。
 全体として今回の企画は時宜を得たものになったと思われる。必要施策を個別に指摘してその解決法を限定された条件下で論ずる段階から、土木・建築・都市計画・福祉の有機的連携と市民社会のソフト的な熟成を組み合わせて福祉のまちづくりを行うことの重要性が浮き彫りになったように思われる。ファームウェアとしてのまちづりという統一テーマにふさわしいものとなり、参加者ひとりひとりが何かを持ち帰ることができたと確信している。ただし、今回のテーマは従来のまちづくりすべてを横断するものであるだけに、限られた時間では課題全体をカバーしきれない。また、榊原氏のファームウエア本質論や景観との調和問題、真田氏の福祉交通サービス問題や福祉と交通のリンク問題、尾上氏の当事者行動と施設整備の意味問題や駅舎整備の詳細、藤村氏の道路断面構成論や当初全体整備問題、岩田氏の視覚・聴覚・触覚などの知覚と施設整備のいずれもそれだけで十分シンポジウムのテーマとすべきものであり今後の課題としたい。なお、今回の企画は、「福祉のまちづくり研究会」関西支部の後援をいただいたことを付記する。



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