1999/4 No.13 日本都市計画学会 関西支部だより

委員会から
都市計画シンポジウム
1998年度第3回都市計画シンポジウム


1) シンポジウムの概要
テーマ:ファームウェアとしての都市づくり−震災復興にみる生活環境としてのまちづくり−
パネリスト:「都市の盛り場」:角野 幸博 (武庫川女子大学教授)
「アート・風景・都市」:杉山 知子 (現代美術家、C.A.P.代表)
「コミュニティと情報」:山口 一史 (AM神戸・報道制作局長)
「都市のすまいづくり」:石東 直子 (石東・都市環境研究室)
コーディネーター:小浦 久子 (大阪大学・助教授)
司 会:岡山 敏哉 (大阪工業大学工学部建築学科講師)
日 時:1999年1月22日(金)14:00〜17:30
場 所:こうべまちづくりセンター2階ホール
参加者:35名

2) 趣旨およびパネルディスカッションの概要
[報告:木多道宏企画・事業委員(大阪大学工学部)]
《趣旨》
 前年度および今年度における都市計画シンポジウムは、「ファームウェアとしての都市」をメインテーマとして連続4回実施される。本シンポジウムはその2回目に当たり、「震災復興にみる生活環境としてのまちづくり」をテーマとしている。
 震災から4年が経過し、建物再建が進む中で、住まいの再建には住宅供給とともに住み方を支えるサービスや環境が必要なこと、様々なまちづくり活動における情報の共有化やコミュニケーションの難しさ、都市のかたちには住まい方や都市の使い方などの文化が反映されていることなどが実感されるところとなった。復興のプロセスの中で見えてきた都市整備における問題や、様々に試みられてきた暮らしや賑わいを取り戻していく工夫を通して、ハードとソフトが連携した生活環境としてのこれからのまちづくりについて考える。
《話題提供》
 角野幸博氏は、神戸市三宮北部地区(下山手通、北野坂、東門街沿道)の盛り場における、建物およびテナントの復興状況に関する調査報告をされた。建物数や店舗数の面では、各街路間で程度の差はあるものの、おおむね復旧が進んでいると判断できるが、テナントの入れ替わり動向に着目すると、依然店舗の入れ替わりは激しく、また、用途変更の実態を見れば、復興過程の時期により回復の進む業種・業態が変化していることが言及された。この盛り場の変化は、本来10〜20年の間に生じるプロセスが震災復興を通して短縮されて生じたこと、さらに、街が復興する過程で'主役'が入れ替わるので(例えば、復興当初は若者向けの業種業態が増加)、街に賑わいを復活させるためには、こうした業態が果たす役割に着目することが重要であることが指摘された。
 杉山知子氏はC.A.P.(芸術と計画会議)の活動を紹介された。例えば、C.A.P.による「旧居留地ミュージアム構想」は震災を契機として提案された新しい街づくり構想であり、街全体を美術舘とすべく、人々が芸術・文化を体感できる空間を街の各所に点在させたり、美術館の廊下に相当する街並みの魅力を充実させることが目標にされている。また、C.A.P.主催による催し「CAPARTY」では、現代アートに縁の薄かった人も、アートや街の新しい見方・感じ方を体験できる事などが説明された。以上の活動の紹介を通して、芸術をきっかけとして集まってくる人々のふれ合いやコミュニケーションの重要性、そして、新しく再建された街や建物の中に、どのような生活・文化・アートを植えるつけるかが重要な課題であることが指摘された。
 山口一史氏は、昨年まで神戸新聞の記者として震災や復興の状況を捉えてこられた経験を踏まえ、ジャーナリズムが復興に対してどのような役割を果たしてきたのかを発表された。役割の1つは論説を通してまちづくりの課題を提示することであり、これまで神戸新聞の社説では、行政の説明義務、国・自治体・市民の関係、市民社会のあり方、まちづくりの検証の必要性等が取りあげられてきたことが言及された。また、もう1つの役割は具体的情報の提供であり、事実をどのように捉え説明できるかが重要な課題であるとし、例えば、神戸新聞が発刊している研究雑誌では、商店街の復興に関する課題をより明確にするため、各商圏における人口変化等の調査結果を掲載したこと等が説明された。
 石東直子氏は、コレクティブハウジング事業推進応援団の活動紹介を通して、ハードのみならず、新しい「居住サポート」を持った住宅づくりが必要であることを述べられた。災害公営住宅の新しい事業として、高齢者向けを中心とするコレクティブハウジングやグループ入居制度等ができたので、入居前の高齢者にこれら新しい住宅や制度の説明をしたり、入居後の交流会を開く等の活動がされている。第一の目的は人間関係をつくることであり、いっしょに住む人が顔見知りになることが安心して住める住まいづくりにつながることが強調された。現代社会では高齢者のみならず若い世代でも一人暮らしの人口が増加し、日常生活での問題が家族や地域の中で解決できなくなっている。隣の人の顔が見える住まい方が必要であり、今回紹介された活動は、被災地が一歩先駆けて経験した住まいづくりであることが指摘された。
《ディスカッション》
 を果たしていることが指摘された。商業活動の視点から見れば、裏通りは建物の賃料や改修費が安いので、新しい店や人の動きが生まれやすく、アートの立場から見れば、裏通りの「自由さ」がアートやコミュニケーションを育み、街のにぎわいが生まれること等が言及された。次に、「復興」の意味について議論がされ、被災地の現状を考えれば、「復興」は元に戻ることではなく、新たに生まれ変わることである、都市は常に変化しており、今回の震災でその変化が先験的に現れたと判断すべきことが確認された。また、街の変化を支える人々の生活の重要性が議論され、今回の震災復興でほぼ回復しているハードに対し、人のふれ合いやアートをいかに付加していくかが今後の課題であることが指摘された。さらに、「居住サポート」のようなボランタリーな活動に職能を確立するシステムづくりが必要であることや、震災後新たに発生した「コミュニティ・ビジネス」が都市部の脆弱なコミュニティーを充実させることができるかどうか等についても議論された。



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