1999/9 No.14 日本都市計画学会 関西支部だより

都市計画思想の構築

副支部長 平峯 悠 (大阪高速鉄道 代表取締役社長)


 20世紀の思想は、西欧が中心になり動いてきたことは間違いない。それは人間が進歩していけば生産力は上がり、生活水準は向上し、同時に政治・経済体制及び文化も進歩するという「進歩の思想」であった。しかし進歩・発展を優先すればそれまでの伝統や歴史が疎かになるという恐れも潜み、20世紀後半にはそれが顕著に現れてきている。

 日本の場合特に、経済効率や機能主義を重視した成長発展、進歩の思想の基に社会・経済政策が進められ、その結果都市計画でも画一的な区画整理や再開発、「遅れ論」からの施設整備が行われ、更には土地政策や地価問題に寄与することにつながらない歪な用途・容積制度の運用をも余儀なくされている。

 公共事業の配分を巡って、都市に重点投資すべきとの意見もあるが、既成市街地への投資は巨額な事業費と労力及び時間を要し、その上今までの都市の良さや伝統を破壊することになっては浮かばれない。例えば老人を含む住民の思い出と自由を保証する下町や商店街の破壊あるいは無機質な都市改造につながるものであっては悔いが残る。今後の都市づくりの根本的な思想なしではその方向を誤ることになろう。

 人間の文化は今、自然の歴史に対しての責任が問われている。即ち地球温暖化を防止し、生物の多様性等を保障することは我々の責務である。都市計画でいえば住宅問題(住み方や場所)、交通問題や自然保全と再生に対して明快な方向を示すことである。人口減社会が到来し、地球環境問題が顕著になっているにもかかわらず、進歩と機能主義等今までの思想を踏襲する限り地球との共生はもとより、人間の幸福を目指す都市の実現はおぼつかない。

 多様な都市を背景とする都市計画学会関西支部として、新たな思想を構築すべく、広く真剣な議論が展開されることが是非とも必要であると考えている。




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