1999/9 No.14 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
事例紹介 2 TV討論と市民による京都づくり
 
長谷川 和子 ( 京都放送取締役)


 京都市内中心部の活力低下が著しい中、京都経済界が京都百年の大計に立っての新都市づくりとして提案している「南部開発」をテーマに8月放送分の「どうする京都21」が始まった。このテレビ番組は、京都経済同友会の発案、京都商工会議所など経済4団体の提供で、KBS京都がテレビ開局30周年記念番組としてこの4月から取り組んでいるものだ。当日は南部開発の必要性や実現に向けての取り組み、テーマパークの建設や情報新拠点の整備など京都のまち全体が活気づくような大胆な提案を巡って活発なディベートが繰り広がられた。番組では電話、FAX、Eメール等を活用した市民参加方式をとっており、本番開始前から「全く新しい発想による都市づくりが大切」「京都市以北の都市機能を南部に移転することにより北部はますます疲弊する」「高度集積地域だけでなく周辺の歴史地域なども組み込んだ都市開発が重要だ」等の意見が続々と放送局へ寄せられた。視聴者から寄せられた意見は生放送中に次々と紹介され、京都市民の南部開発に対する関心の高さが浮き彫りとなった。

 また、6月には、人間の血管ともいえる交通問題を取り上げた。三方を山と川に囲まれ、南はJRの線路によって遮られている京都市域は、スプロール現象とあいまって朝夕の交通渋滞を引き起こしている。それに加え、観光シーズンの土日曜日の交通事情は最悪で、交通問題の早期解決が市民から強く求められている。番組では、パークアンドバスライドによる交通規制、バス専用レーンの徹底、地下鉄を中心とするバスシステムの再構築などについてかなり突っ込んだ討論が繰り広げられたが、スタジオ討論と平行して視聴者からも大量の意見が寄せられた。その一部を紹介すると「道路拡張、整備中心の現交通施策はマイカー利用を促進するだけ」とした上で「LRTの早期導入」を求める声があるかと思えば、「LRTはコストがかかりすぎるからバス整備を先行させるべき」という声もあり、また、「同じ方向であれば、一枚の切符で乗り換え可能とすれば便利で利用客も増える」といった提案も寄せられた。

 過去に同種の番組でコメンテイターを務めた故高坂正堯京大教授は討論を通じて京都の奥の深さをしみじみと感じたとした上で、視聴者から寄せられた多くの意見に強い感銘を受け、実現できればよいなと思ったものが多かったと後述している。

 京都は「頑迷固陋、優柔不断」などといわれるが、これは権力者の移り変わりに対して民衆がサバイバルするための手法であり、その個性があったからこそ1200年の京都があったことも事実である。しかし、最近の京都は事を進めようとしても意見の一致をみることがなく、このままではどこにでもある1ローカル都市となってしまいかねない状況下にある。京都に存立基盤を持つ放送局として、この日本を代表する京都に徹底的にこだわりながら、京都の将来像を視聴者と共に考える事ができればとの願いからこの番組が誕生した。都市の主役は、そこに住む「人」であり、行政でも経済界でもない。番組の出演者だけではなく、電話やFAXなどを通じて番組に参加する視聴者が京都のこれからを決定するといっても過言ではない。時代の変革期にある今、行政も、経済界も、そして市民もそれぞれの主張をメディアを通じて明確にすることから、21世紀の京都の第1歩が始まるように思えて仕方がない。




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