1999/9 No.14 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
事例紹介 5 全権利者タイプ参加の震災復興街区共同再建−神戸市灘区都通4丁目地区−
 
間野 博 (広島女子大学生活科学部教授)


*はじめに*
 これは、住民・権利者が自らの居住空間・資産である土地・建物に手を加える「まちづくり」の事例である。@等価交換を使えない(=自力型しかない)密集住宅地で、A借家人も含めたあらゆる権利者タイプ(33人)が揃った(=最も権利関係が複雑な)、B街区規模(1,670u)の地区を、C権利者が共同で再建したものである。
 
*従前の物的現況*
 震災以前には、戦前長屋が5棟建っていた。全延床面積は1,720uで、大半が2階建て、一部平屋だった。戸数は35戸だが、個々に手を加えており、原型は28戸である。
 
*権利者像*
 権利者タイプには、地主、持ち地家主、借地家主、持ち地持ち家、借地持ち家、借家の6種類あるが、この地区にはこれら全ての権利者タイプが揃っていた。
 地区の約90%を一人の地主が所有し、道路に面した一画を借地家主に貸し、残りを16人の借地持ち家に貸していた。残りの10%は4人の持ち地持ち家であった。双方とも貸し家化が見られた。借地持ち家の敷地面積が約60uのものが大部分なのに対し、持ち地持ち家の方が40〜50uと小さかった。
 不動産の権利や契約がはっきりしない時代に契約し、しかも長い年月の間に様々な変転を経ているので、権利に関しては複雑であった。権利者も長い年月の間に多様化していた。
 借地人の中には、@戦後の窮乏期に4世帯が同居し、今はその中の2世帯となっているが、借地契約名義人は既に転出していて、4人の間の念書だけが残っている、A血縁関係にある2世帯が1階2階に分かれて住んでいて、所有登記も分けている、Bちょうど借地家主から借地権を買い取る交渉中だった借家人、などイレギュラーな事例が少なくなかった。
 持ち地持ち家では、友達を同居させているのだが、ともに高齢単身者で、持ち主の方が障害を抱え同居人の世話になっているというケースがあった(二人とも借り上げ公営住宅に入居し、隣同士で暮らしている)。
 一方、借家人の中には、実は別に持ち家の自宅がある人もいた。
 このほか、権利関係ではないが、全く赤の他人でありながら身寄りのない高齢単身者を家族同然に世話している人が2人いた。
 相続に伴う名義未変更など、権利者本人と名義人が異なるケースが10件あった。内1件は震災に伴う相続だったが、他は震災以前からのもので、権利者確定は困難を極めた。
 
*事業の概要*
 震災で全部解体除却された後、転出希望者を含めた全権利者が「都通4丁目街区再建事業実施協定」を締結、事業参加者が「都通4丁目街区再建組合」を結成し、RC造5階建て共同住宅「カルチェ・ドゥ・ミロワ」(延床面積3,980u、61戸)を建設した。
 持ち家コーポラティヴ棟18戸と地主と家主が建設する賃貸住宅棟43戸(内オーナー住戸1戸)をエクスパンションジョイントでつなぎ、一体的な集住体となっている。
 権利者は実に多様な対応をしている(下図「権利者の希望と対応」参照)。
 住宅・都市整備公団がディベロッパーとなり、持ち家意向に対しては土地の権利を寄せ集めて現地コーポラティヴ、賃貸経営意向に対しては賃貸住宅を建設し、借家意向に対しては、これを市の借り上げ公営住宅とし、従前居住者として特定入居、更に転出者もその権利を公団が取得することによって税の減免を受ける、という形で各意向に対応している。
 



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