1999/9 No.14 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
事例紹介 6 俊徳道せせらぎ広場−大阪下町における広場づくりワークショップの試み−
 
久 隆浩 (近畿大学理工学部助教授)


 大阪市生野区では南部地区約100haを住宅市街地総合整備事業(住市総)を用いて整備に入っているが、その一環として「まちかど広場」の整備が行われつつある。その整備第1号となったのが、「俊徳道せせらぎ広場」であり、ここでは計画当初からワークショップによって徹底した住民参加方式で計画づくりが行われた。ワークショップの事務局は、大阪市都市整備局生野南部整備事務所と現代ランドスケープの西辻氏、そして私が共同で受け持った。

 ワークショップは全部で5回開かれた。第1回目のワークショップでは先進例として世田谷の公園ワークショップの事例をビデオで紹介した。その際の住民の方々の反応は「これは世田谷ややからできたんやで。生野ではこんなうまくいかへんわ」ということであった。また、議論のなかでも、広場をつくると少年たちが夜間たむろして困る、という意見など、広場づくりについて批判的な意見が主流を占めていた。このままの雰囲気ではどうなるものかわれわれも心配したのは事実だが、乗りかかった船、いけるところまでやってみよう、という気持ちで続けてみた。

 しかし、徐々に積極的な利用について発言が多くなり、ワークショップの雰囲気もよくなっていった。管理についての不安が一部の方々からは出ていたが、「せっかくつくるのだから、だめだだめだという消極意見ではなく、子孫に残せるようないいものをつくろう」という意見がすぐとなりに住む方から出され、それで場の雰囲気も積極的な意見交換に変わっていった。こうした住民意識の高まりもワークショップのひとつの成果であろう。

この広場がかつての俊徳街道に面していること、そして小さなせせらぎを計画したこともあって「俊徳道せせらぎ広場」という名前が決まった。じつは、デザインにおいても俊徳街道を意識して、塀を和風にしたり手水舎を設けるなどの工夫を行っている。また、住民の方々の希望もあって、広場の地下には防火水槽が設けられており、それを手押しポンプによってせせらぎに水を流す工夫も取り入れられた。

 最初はどうなるものか、と一抹の不安を抱えながらのワークショップであったが、終わってみると成功裡に無事修了することができた。たかだか300uほどの小さな広場であるが、その整備効果は住市総の地区全体にも波及していく。まちかど広場のような短時間で成果が出る事業と完成までに長時間を要する事業を組み合わせることによって、全体の地区整備をスムーズに進めることも可能になる。生野の場合にも、こうした効果が徐々に出始めている。生野区では、2つめのまちかど広場用地が買収されようとしている。ここでもまたワークショップ形式による計画づくりが企図されている。今度は、世田谷のビデオではなく、俊徳道せせらぎ広場づくりのビデオで説明することができる。また、身近に完成した広場を見ながらワークショップを進めることができる。第一歩を乗り切ったことで、その整備効果はつぎつぎと広がっていくことだろう。




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