1999/9 No.14 日本都市計画学会 関西支部だより

トピックス
まちづくり基本条例−“人間サイズのまちづくり”の推進−

宮本 比佐志 (兵庫県まちづくり部まちづくり政策課課長補佐)


*はじめに*
 21世紀を目前に控えたいま、少子・高齢化に象徴される社会経済的環境の変化や住民ニーズの高度化・多様化の進展などに伴い、これまでの経済、人口の右肩上がりの時代のように将来の方向が見えやすい時代ではなくなってきている。加えて、国と地方との関係においても、本年7月8日、地方分権一括法が成立し、待ったなしの状況になっている。
 このようなさまざまな現下の課題へ対応するとともに、阪神・淡路大震災の復旧、復興の過程で得られた貴重な教訓を次世代に引き継いでいくため、兵庫県では、本年3月、「まちづくり基本条例」を制定した。
 
*基本条例の理念*
(1) 生活者の視点に立った“人間サイズのまちづくり”
 基本条例の第1条では「成熟社会におけるまちづくりは、一人一人が地域社会のなかで、安全に、安心して暮らすことができるまちづくり及び地域への愛着をはぐくむ魅力あるまちづくりを旨として、生活者の視点に立って行われなければならない」という基本理念を掲げ、これまでのまちづくりの、ともすれば経済活動に視点をおいた考え方から人間の生活に視点をおいた考え方へと転換していくことを宣言している。つまり、拡大し巨大サイズ化してきたまちづくりからまちの内側に目を向ける、物質的な経済サイズで考えてきたまちづくりから安心感や心のゆとりといった内面に目を向ける、個性に乏しい画一サイズのまちづくりから地域の持つ個性、魅力へと目を向ける―このようなまちづくりを行っていこうとするものである。
 言い換えると、まち全体が住民にとって安全で安心な魅力ある一つの生活空間として、住み、憩い、学び、働くまちとなるような、生活者の視点に立った"人間サイズのまちづくり"を推進していくことを意図しているのである。
 
(2) 住民とのパートナーシップによるまちづ くり
 我々は、震災を契機とするボランティアやNPO活動の広がりに公民協働への大きな流れを実感するとともに、被災地において広く芽生えた住民による自発的かつ自律的なまちづくりへの取り組みにこれからの新しいまちづくりの在り方を見いだすことができた。
 こうしたことを踏まえ、基本条例においても、第2条において「成熟社会におけるまちづくりは、県、市町、県民及び事業者の相互の理解、信頼及び協働の下に行われなければならない」と規定し、住民や行政等のパートナーシップ(協働)によるまちづくりを基本理念として掲げている。そしてこの理念を受け、まちづくり施策に関する情報の住民への提供や住民からの意見・提案の施策への反映等について規定しているのである。
 
*今後の展開*
 まちづくり基本条例は本年9月17日、施行することとしている。
 今後は、この基本条例に基づき、まちづくりの基本方針となる「まちづくりグランドデザイン21」を策定し、@自然と共生し、災害に強くバリアフリー化が進んだ“安全なまちづくり”(巨大サイズから人間サイズへ)、A住民同士の連帯、地域社会相互の交流が活発な“安心なまちづくり”(経済サイズから人間サイズへ)、Bまちへの愛着をはぐくむ地域の個性が生かされた、感動や活力あふれる“魅力あるまちづくり”(画一サイズから人間サイズへ)―を総合的に展開していくこととしている。
 加えて、県民の主体的なまちづくりが県土全域にわたって展開されるよう、市町における住民主体のまちづくりを推進する体制整備への支援、市町と住民が協働してまちづくりを行う場合の活動助成、住民によるまちづくり計画の策定支援、アドバイザー派遣等を行っている。
 これからも市町等との連携を図るなかで、地域住民の自由な発想と創意工夫を生かした自律的なまちづくりが展開できる環境整備に全力を注いでいきたいと考えている。



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