1999/9 No.14 日本都市計画学会 関西支部だより

人と仕事
いま、自治体の福祉計画や総合計画にかかわって思うこと

吉原 雅昭 (大阪府立大学社会福祉学部専任講師)


 主な担当科目は「社会福祉運営論」で、我が国の社会福祉事業の運営を規定する制度的な特徴を把握したうえで、事業を具体的に企画、実施、評価する方法を身につけることを目的にしています。研究関心は、大きく言えば「地方自治と福祉」で、基礎自治体における計画、組織、事業の運営方法、財政などに興味を持っています。これまでイギリスやスウェーデンとの国際比較も若干手がけてきましたが、近年の研究テーマは、我が国における都市自治体間の比較です。現在、科研費をいただいて、自治体間の格差が高齢者保健福祉計画以降どのように変化してきたのか。その原因としては、どのようなことが考えられるか、といったことを調査研究しています。くだけた感じで自己紹介をする場合には、福祉の「自治体オタク」とか「計画オタク」とか言っています。

 大学院生のころから、幾度となく、社会福祉協議会が地域福祉(活動)計画を策定する作業にかかわらせていただく機会がありました。また、就職して以降は、堺市の住宅マスタープランの策定にかかわらせていただいたり、現在は、八尾市で新総合計画づくりに専門委員として、また、羽曳野市で介護保険事業計画および次期高齢者保健福祉計画の作成に委員として関わっています。介護保険について強く感じていることは、自宅で暮らしつづけるには住宅の改修がポイントであるにも関わらず現行法制では全く不十分であることと、道路、公園、公共交通機関、商店など「まちの構造全体」を根本的に見直さねば、地域で「市民として」暮らしつづけることはできないということです。

 また、今、総合計画づくりに関わって感じていることのひとつは、総合的な視点が要求される総計において「抽象的、一般的、平均的な市民」を基盤にしていてはダメで、障害を持つ人も、小さな子どもも、高齢者も、外国人も、妊婦も、さまざまな市民がいることを念頭におく必要があるということです。私自身は、障害を持つ人や高齢者や子どもたちの生活とニーズを起点として、深いレベルまでまちづくりを追究していけば、おのずと「総合的なまちづくり」のプランができあがるのではないかという、なかば信念めいた仮説を持っています。いかがでしょうか。堺市で住宅マスタープランを作った際にも、このような視点から幾度となく提案したのですが、現状ではこういった側面を計画に具体的に盛り込むことは難しかったようです。やはり、実際にニーズを抱えている人や、この問題に強い関心を持つ市民が計画づくりに参加せねば、よい計画はできないようです。

 また、これまでの福祉分野の計画で反省すべき点は、住宅やまちづくり、交通などの視点が弱かったことや、計画において大切な住民参加や進行管理が不十分なことなどたくさんありますが、欧米における自治体計画との最大の違いは「理念体系の欠如」です。福祉学者と言えば人権やノーマライゼーションを語るイメージがあるでしょうから、これは意外に聞こえるかもしれません。しかしながら、高齢者、障害者、児童育成のどの計画も、多くの自治体では事業量や人的資源、施設などを増加させる側面ばかりが議論され、計画によって期間内に「何を」達成したいのか、何のために、現状をどのような方向に変革するために個々の事業を行うのかといったことが計画書に書かれていません。自治体が自分たち自身の言葉で理念や目標体系を語っている計画は、皆無に近いほどです。かなりの数の欧米の自治体福祉計画を持っていますが、計画の主導理念や施策の方向性、サービス利用市民の計画年次における「将来像」などをしっかりと市民参加で検討し、自分たちの言葉で書くことが基本になっているように思われます。自治体の福祉計画が、真の意味でまちづくりの計画になるには、まだまだ時間がかかりそうです。




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