2001/1 No.15 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
「この国のかたち」としての都市計画の変革を−環境・協働・自律の都市づくり・まちづくり−

赤ア 弘平 大阪市立大学


 わが国都市を巡る状況は大きく変わりつつある。今、わが国の都市計画も近代を総括して現代を捉え、都市づくりやまちづくりの未来を展望しなければならない。都市計画や都市づくり・まちづくりの領域でも「この国のかたち」を変革するほどの強い意思と気概をもって取り組む必要がある。

 展望の際の重要なキーワードの1つは「環境」で、地球環境も視野に入れ、何としても環境負荷を軽減させながら都市を再構築しなければならない。「協働」も重要で、都市計画や都市づくり・まちづくりの際に都市や地域の将来像を描くこと、又その実現についても、行政・住民・事業者それぞれが役割を果たすべきである。3つ目は「自律」である。都市計画や都市づくり・まちづくりの実際は、地方や地域で展開される。地域も、又地方自治体も自律する必要がある。

 都市計画研究は常に、都市計画や都市づくり・まちづくりの実践から学ぶことが求められる。幾つか例示してみよう。

 芦屋市は近年、駅のプラットホームから200m以内にパチンコ店が立地することを制限しはじめた。わが国は1919年「都市計画法」・「市街地建築物法」以来「地域制」に基づく建築規制を行っているが、芦屋市はその枠外、環境保全を目的とする条例に基づいてこの建築制限を行っている。そもそも、都市づくり・まちづくりは、地域の歴史と実情、そして住民の意向に根ざし、きめの細かな配慮を施したものとして展開すべきであるが、芦屋市の場合は、地域特性に根差せば「この街にはパチンコ屋は要らない」というわけであり、それが既往の都市計画システムで実現できなければ、市民の合意に支えられて描いた「その街の像」に基づき、自律的システムを構築して都市づくりを進めていこうというのである。

 一方、20世紀最後の年の12月22日に北海道・ニセコ町が「まちづくり基本条例」を制定した。注目すべきはこの条例をすべてのまちづくりの基本とし、これを都市計画法や建築基準法など国法の上位に位置づけようとしていると読み取れることである。又一般的な「町民のまちづくりへの参加」はもとより、「満20歳未満の町民のまちづくりへの参加」も規定し、まちづくりの過程を何よりも大事にしようとしている。これは「情報共有の推進」や「町民投票制度」を明示的に規定したことからもうかがえる。協働・自律の都市づくり・まちづくりの観点からすると、学ぶべきこと大である。

 では、環境の都市づくり・まちづくりはどうか。近畿1400万人の水源・琵琶湖を抱する滋賀県の水質保全の取り組みにその例を見てみよう。滋賀県は早くから琵琶湖の水質保全のために様々な施策を展開してきたが、1997年4月1日施行の「滋賀県生活排水対策の推進に関する条例」は注目すべきである。これは、公共下水道未整備区域での建築行為に対して合併処理浄化槽の設置を義務付けたものである。県は当初、建築基準法に基づいてこれを行おうとしたが、現行法は建築物に関する最低の基準を定めて国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的としており、そこには安全・防火・衛生上の最低水準確保の観点はあっても、環境の観点は未だないから許容されなかった。即ち合併処理浄化槽設置を義務づけるのは過度の制限となるというわけである。そこで滋賀県は「環境の都市づくり」の観点から地方独自のシステムを自律的に構築した。環境・協働・自律のまちづくり実践の先駆として学んでよい。

 では「この国のかたち」としての都市計画システムの変革をどう展望するのか。まずは都市計画法、建築基準法に規定する理念や目的を改革すべきである。それがないとわが国の都市づくり・まちづくりは変革されない。そして都市計画については、国土計画や圏域計画体系との関係の中で、都市づくりの進むべき大きな方向を定めるものとして再編されるべきである。都市計画は一体の都市として開発・整備・保全すべき区域を画し、その区域の都市骨格や都市機能、そして地球環境、気候・風土、土地条件や水系などの自然条件や生態系などを視野に入れてそこで確保すべき環境の質についての大枠、又防災都市づくり、歴史的空間保全などの基本方向を指し示すものとすればよい。

 身近なまちづくりはどうするのか。地域の実情に根ざしたまちづくりを進めるシステム構築を、「地区整備計画法(まちづくり法)」というべきものを興して行うことである。まずは現行都市計画法に規定する地区レベルのまちづくりシステムを分離、再編し、建築基準法の集団規定をこれに統合させることである。その時、今の「最低基準」にとどまらず「より良い水準」での都市づくり・まちづくりを、地方や地域の自律に任せて進めることができるよう法の目的そのものも再構築すべきである。

 わが国都市計画は環境・協働・自律をキーワードとして既に地方から変革されつつあるが、更にその実践を積み重ね「この国のかたち」も変革したい。




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