2001/1 No.15 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
自然環境を保全する計画とパートナーシップを

神吉 紀世子 和歌山大学


 市街地・農林業地等の別に関わらず、市町村域全域について土地の管理をどのように行っていくかは地方分権化が進む今後、市町村の重要な役割になるとの指摘がある。既に都市マスは全域を対象としている。山林、農地から市街地まで視野に入れ自然環境を保全する条例づくりも各地で取り組まれている。

 自然環境保全の視点からは、一般に土地管理について、貴重な自然を保護する、適した利用・管理の実施によって保全する、衰えたり失われたものを再生する、の方針が考えられ、さらに、各方針に該当するゾーンを相互に関連させるネットワーク形成、を加えた4 つの方針が考えられる。市町村域の一部分を「保全緑地」「公園」とするだけでなく、水系への影響を農村でも市街地でも配慮するなど、全域をコーディネートする「計画」が望まれる。筆者は現在、岸和田市の自然環境保全条例案づくりに参加しているが、山地〜近郊農村〜市街地〜臨海部とそれを貫く水系が構成する市域全体について、上のような方針に対応する土地管理・利用の誘導策について生物学や地学の先生方と一緒に議論している。

 一方、実際に自然環境が保全されるには、多くの人々の関心と参画が不可欠である。人々の目に触れにくい場所では、たとえ保護地区に指定されていてもゴミの不法投棄等が起こることがある。保全、再生には人の手による利用・管理が必要である。しかし今、それを、地元居住者、所有者、又は行政スタッフだけでは負担しきれなくなっている。参画応援してくれる多くの人の手が必要なのである。

 近年、都市住民のボランティアが自然の管理を行う活動が活発である。里山や山間農地を中心に、行政や非営利団体等が主催する様々な取り組みが各地で実現している。そこで、このような新しい担い手と、手にあまる山林や農地を抱えて不安を感じている地元居住者との間をうまく繋ぐパートナーシップづくりが重要になる。管理ノウハウは豊富だが労力に乏しい地元と、経験はまだ少ないが関心と労力を持つ都市住民の間の信頼関係さえできれば、お互いの得意・不得意をカバーできる。多くの市民にとって、身近で楽しめる、交流や学習の機会になるなど、豊かな暮らしのために大切な自然だという位置づけが強まれば、保全をすすめる動機づけにもなる。パートナーシップ関係が出来たところから、一種の協定地域として自然保全ゾーンにしていく制度もアイデアとしてありえる。

 上記の「計画」づくりには、このようなパートナーシップを促がす働きかけが同時に進められることが必要である。




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