2001/1 No.15 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
改めて「人間の幸福とは何か」を求める都市計画へ

澤木 昌典  大阪大学


 今世紀、わが国は本格的な高齢社会へと移行する。総人口は2010年前後に1.3億人でピークを迎え、その後減少に転じる。65才以上人口は20年以降は3.3千万人で一定化するが、40年までは高齢化率は一段と進展し、その後30%前後で安定する。一方、全地球的には40年に石油の埋蔵量がなくなり、60年に天然ガス、70年にウランの埋蔵量もなくなるとの予測がある。また、温暖化などの地球環境問題も一層深刻化し、気候変動による被害も各所で増大しよう。

 これら受け入れがたい予測がひたひたと現実味を帯びてくる今世紀前半における都市計画の役割を考えると、それは40年までに少子高齢社会に対応でき「環境」的にも持続可能な都市への再構築を概ね完了させておくことである。つまり、この40年間は近代文明に依存した20世紀型の都市を持続可能な都市へと軟着陸させる「近代化の総決算」の期間とならざるをえない。しかし、現状の債務超過型のわが国の財政構造を考えれば、国主導の公共事業を中心とした施策の展開が至極困難なのは自明である。

 ここで、今後の約25年間が非常に重要味を帯びてくる。なぜなら、この時期には団塊の世代の大半がまだいわゆる「元気老人」の域にある。この「まちづくり」に参加しうる人的資源(時間×能力)が極大化している時期に、住民自身が自分たちの生活・暮らし方と地域の環境を見据えながら、将来の世代へ向けた持続可能な都市のあり方を地域の行政体や専門家との共働の中で見出しておかねばならない。

 具体的には、生活者を主体とした居住環境やコミュニティの再構成とそうした都市の運営方法であり、公共交通の充実であり、さらには自然との共生などである。人間尺度のコンパクト性をも指向するこれらは、アメリカでのニュー・アーバニズムとも軌を一にするが、主には既成市街地を対象とした「リノベーショニズム」とも呼ぶべきものである。

 環境・財政・人口構造等の厳しい条件下で、いかに人間の幸福と公共の福祉が最大となる持続可能な都市を築くのかを、住民の視座から再考しつつ共通認識を育てること、そこに適用すべき計画技術を選択あるいは開発していくことが直近の課題である。




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