2001/1 No.15 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
21世紀の都市計画は、融合がキーワード

杉原 五郎  樺n域計画建築研究所


大都市圏のリノベーションにおいて問われたもの
平成12年、国土庁大都市圏整備局のメンバーとともに、京阪神圏のリノベーション・プログラム策定に係わった。いまから50年後の21世紀半ばを展望して、京阪神圏の都市圏構造を再構築していくためのプログラムを示すというのが目的であった。人口が本格的な減少時代に入り超高齢社会が到来する、グローバル化とIT革命の進展により京阪神圏の産業構造は変貌する、住む、働く、学ぶ、遊ぶといった人々のライフスタイルも大きく変わらざるをえない、などといった超長期の社会変化を展望しつつ、京阪神圏のリノベーションについて検討・提案したわけである。これまでの20世紀後半の考え方から21世紀型思考にどのように転換していくかが問われた。そのキーワードは、「融合」である。

都市計画と産業政策との融合
京阪神圏は、現在、厳しい経済環境の下にある。経済の中枢としての本社機能の流出が続き、失業率は全国的にみても高い水準にある。産業の再生と雇用の拡大は、京阪神圏にとって待ったなしの課題である。こうした状況を打開していくために、都市計画(都市政策)と産業政策の一体的な推進を図る「産業・都市政策」が重要との問題提起をおこなった。これまでは、都市計画と産業政策はそれぞれ十分な連携なしに展開されてきたきらいがある。これからは、用途純化を基調とした土地利用政策を転換し、産業の業態変化を踏まえた混合論(ミックスト・ユース)の考え方に基づいて職・住・遊一体のまちづくりを進めていくことが重要である。また、臨海部などの遊休地において、科学技術の産業化や環境調和型都市づくりなどをテーマとする社会実験を行いつつ、暫定利用から恒久利用への漸進的な土地利用転換の方策を模索していくことも考えられる。

都市計画と文化政策との融合
これまで、大阪、京都、神戸の三大都心は人々が働くビジネス(業務)の場としての意味合いが強かった。これからは、人々が集い、交流し、遊ぶといった、都市文化創造の場として位置づけ、文化の視点を入れた都市計画を展開していくことが求められる。京阪神圏には、全国的にみても有数の知的資源(大学と学生の存在)があるが、都市づくりにあまり活用されてこなかった。大学を都市の装置と位置づけて、都市の魅力化や活性化に積極的に役立てていくことが重要である。「タウンキャンパス・コンプレックス」の形成などを通じて、文化発信機能を強めていくことが求められる。

都市計画と農業・農村計画の融合
京阪神圏の人口は、大まかに言ってこれから50年の間に2割程度(約350万人、大阪市と堺市の人口)は減少することになる。郊外化の波は止まり、市街地の需要は大幅に収縮して、大量の低未利用地が生まれる。そうなると、市街化区域・調整区域といった現行の都市計画制度はほとんど意味をもたなくなる。市街地にある農地に対する位置づけも大きく変わらざるを得ない。市街地の中に自然を回復し、交通インフラや情報インフラに加えて、第三の社会基盤として環境インフラを形成していくことが重要性を帯びてくる。都市計画と農業・農村計画の融合(「都市・田園計画論」の構築)は不可避となる。

都市計画と港湾計画の融合
京阪神圏の沿岸域、大阪湾ベイエリアは、すでに1980年代から1990年代にかけて、大きく変貌してきた。老朽化・陳腐化した港湾空間の再開発、重厚長大型・装置型産業の衰退と大量の遊休地の発生、居住・商業・アミューズメントなどの複合開発は、相当程度進展している。しかしながら、わが国の大都市圏臨海部に係る計画制度としては、都市計画と港湾計画が併存する状況が続いており、実態と制度の間には大きなギャップが生じている。ベイエリアを21世紀の都市フロンテイアとして再生していくためにも、都市計画と港湾計画の融合は必然である。臨港地区制度の見直しは避けられない検討テーマのひとつと言ってよい。

21世紀を明るい新世紀に
これから始まる21世紀は、いまのところ明るい話題も少なく、なんとなく暗いイメージがある。新世紀を将来展望のあるものにするために、人々の智恵が発揮しやすくしていくことが重要である。人類の英知としての都市計画が、多くの市民や国民に夢と希望を与えるものであってほしい。



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