2001/1 No.15 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
環境効率の高いまちづくりの実現に向けての提案

藤田  壮  大阪大学


21世紀の都市の直面する環境制約
 都市空間には、20世紀の急速な成長を通じて膨大な量の都市構造物ストックが集積されてきた。これらの建造物の多くは、個々に長短はあるにせよ、50年程度の寿命を終えて、2000年のはじめからのおおよそ半世紀の間に一斉に更新の時期を迎 える。もちろん、最終処分場の確保が困難になり廃棄の社会コストが上昇するとともに、建設資材の新規資源の入手コストも上昇する事が避けられない21世紀の状況下では、建設物のメンテナンスや部分更新によって、既存の構造物をこれまでより長期にわたって利用する傾向は高まることは予測される。しかし、これまでに立地している建設物の多くは、資源の再生・再利用を考慮していない設計である。そのメンテナンスや部分更新による利用寿命の長期化には限界があり、建設資材の部品や資材のマテリアルリサイクルを効率的に実現する社会システムが必要といえる。資源循環のために莫大なコストとエネルギーを投入することなく、効率的に建設資材の循環利用を進める都市基盤と土地利用構造の実現を志向することを都市環境計画の緊急課題と位置づける。
 一方で、都市内での事業や生産、交流などのさまざまな活動に伴って、きわめて大量の二酸化炭素が発生している。第3回気候変動枠組条約締約国会議(いわゆるCOP3京都会議)での国際合意では、二酸化炭素等の温室効果ガスの総排出量を2008年から2012年までの平均値で1990年に比べて6%削減することが定められている。二酸化炭素発生の抑制に向けて産業界や市民団体の取組はすすめられているが、21世紀に国際的にも競争力の高い都市を実現するには、都市活動から発生する環境負荷の小さい、環境効率の高いまちづくりを実現することが不可欠といえる。一方で都市が供給する様々な機能、サービスを享受する主体の立地は都市内部だけでなく圏域のスケールにわたっていることことを考慮した上で、CO2が発生する地区、都市、圏域および国土の関係主体間での合理的な責任分担の原則と政策設計に取り組むことが望まれる。

循環型社会の実現に向けての都市環境戦略
 「廃棄物制約」と「地球温暖化制約」を、21世紀の都市環境戦略を描く上での最優先でかつ緊急の条件と位置づけた上で、都市環境の戦略的な取組課題を以下に提案する。
(1) 構造物の資源循環利用を進める都市基盤の整備
 建設資材の循環利用の転換拠点ともに、建築や解体からの建設副産物の発生地点から再資源化資材に転換してリサイクル利用する地点までの輸送体系を都市インフラとして整備する計画システムを構築するとしての整備を進める。具体的には、都市近郊型の再資源化基盤施設と廃棄物輸送とリサイクル資材輸送、都市内のストックヤードなどの逆ロジスティクスの都市循環基盤の整備と、効率的な分別技術の確立などリサイクルの社会的費用を低減するシステムの整備、リサイクル資材の利用を義務づける制度システムの整備を用意する。資源循環の拠点づくりは、建設資材の再生にとどまらず、各地で事業化が進んでいる「エコタウン計画」や、米国におけるEco-Industrial Park事業の枠組みを発展して、循環型の「産業エコロジー」拠点とそれを支える都市基盤システムを積極的に都市環境政策のなかで実現することに展開する。また、21世紀以降に着工される建設物については、構造物については機能需要の変化に対応できる、Skeleton-Infill 型のフレキシブル設計や、鉄鋼材やプレキャストコンクリート、木材などを再利用できる易解体設計などの「環境配慮型設計(Design for Environment またはDesign for Disassembly)」を導入する制度、経済インセンティブを都市環境政策に取り込むことも重要となる。
(2) 高環境効率都市を志向する土地利用政策
 都市の集積による活力や魅力を保ちつつ、建設廃棄物や温暖化ガスの発生強度を低減するには個別の施設や基盤の改善だけではなく都市の立地構造そのものを「高環境効率」に誘導する戦略が不可欠となる。コンパクトな中心街区を実現することは、交通サービスやエネルギーの供給効率を高めるとともに、資源循環利用基盤の用地を都市近郊に確保することを可能にし、さらに緑地の創成などゆとりある都市空間を実現する。そのために、個別の機能、目的ごとに整備されている都市開発手法を、都市の更新マネジメントの手段として活用する。
 例えば、都市から発生する廃棄物や炭酸ガスのもたらすこれまで外部化されてきた環境費用を評価したうえで、地区の開発可能規模を算定し「ダウンゾーニング」施策に加えて、建築物の更新時にさまざまな環境負荷の削減施策を敷地や地区単位で導入し、また許容される容積率が大きくなる「環境インセンティブ」制度を導入することにより、環境効率の高い都市を実現することができる。さらに、ライフサイクル環境評価に基づく環境開発権を各敷地毎に設定するとともに、その開発権の取引市場をつくることによって、一律の規制よりも効果的に環境配慮型のまちづくりを実現する。
(3) 代替的な都市環境オプションの計画と評価
 これらの施策については参加型での合意形成を基本とする意思決定の手順を前提としつつ、都市計画のサイドから、幅広い都市環境領域を視野に入れる代替的な計画オプションを設計して用意するとともに、物理的および経済的な評価技法を用いて、都市環境の将来選択肢とその社会的、環境的な評価を合わせて提示することが必要となろう。例えば、個別の環境改善事業や、環境効率の高いコンパクトな街区構造の実現についての環境効果をライフサイクルの環境負荷削減として、社会的な費用と合わせて定量化するシステムを都市環境計画の意思決定プロセスに取り込むことにより、環境容量を具体の都市環境政策に反映を促すことが可能になる。



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