2001/1 No.15 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
21世紀初頭のまちづくりの展望

北條 蓮英  福井県立大学


 201X年。日本海に面した海岸段丘に自生のすいせんが咲き誇り、その波打ち際に南北に一筋伸びた、とある漁村集落。齢70 台になるAさんは朝からそわそわと落ちつかない。いよいよ今日は町の中央公民館でまちづくりコンクールの審査会がある。それにパスすると、彼らが提案する「まちづくり計画」が認知され、予算化が決定される運びになる大事な節目の日だからだ。彼は、若い頃関西のある自治体でずっと都市計画・建築行政畑の仕事をやってきた。定年退職後、その経験ノウハウや人的ネットワークを生かして故郷で仲間とまちづくり支援を生きがいとして、まちづくりNPO法人を設立、その世話役を務め多忙な毎日を送っている。

 議員立法で成立したNPO法は、当初は登録しても実質的なメリットが少なく単なる仲好しクラブ程度でしか機能しなかったが、その後の改正で、NPO法人についてまちづくり事業における役割が重視され支援策が拡充された。先述のような審査を通過した計画提案に対する公共助成をはじめ、金融面の充実が図られた。とりわけ、NPO法人に対する税制の優遇措置(同法人への寄付行為に対する非課税扱い)が大きい。こうしてNPO法人に個人や企業からの寄付により基金が集まるようになった。その運営に関わってサボーターを担っているのは、生きがいを求める高齢者パワーである。

 さらに都市計画法が「都市・まちづくり法」に改正され、NPO法人がまちづくり事業主体として位置づけられることになった。かつて、まちづくりとは、行政が演じ住民は与えられる、つまり行政=事業主体、住民=客体という図式でとらえるから、いきおい対立構造に陥りがちであった。ところが阪神淡路大震災のあとの復興まちづくりの経験を通じて、神戸で適用したまちづくり協議会方式(専門家・住民・行政のトライアングル構図)が社会的にも評価された。そこで、まちづくりにおける支援機能として、専門家の役割が法的に位置づけられ、具体的には「まちづくりコーディネーター」を専門職能とすることが法の中に書き込まれた。つまり、国家資格となったのである。そのことに伴い各大学にまちづくり学部・学科が新増設され、目下人材育成に懸命である。また、ソーシャルワーカーなど社会福祉専門職とまちづくり専門職との連携も各地ではじまっている。

 一方、即戦力のあるのは、かつて都市計画等の行政職やまちづくりコンサルタント経験者。彼らはすでに「立派な」高齢者の域にあり、「暇を持て余し」「生きがい」に強い関心を持っている。彼らの活用は、ある意味で安上がりともいえる。しかし、まちづくりは丹念に時間をかけて積み上げていく仕事だ。どれだけ時間をかけてもかけすぎることはない。また、合意形成に高齢者の人生体験からくる説得力の技はすこぶる重い。

 高齢者が社会的に活躍する上での条件整備もされた。2000年にとりあえずスタートした介護保険制度も数次にわたる改正でようやく定着してきた。その当時、20年先の予測として就業者3人で高齢者1人を支えねばならず、これでは社会の活力をそがれることが大きく懸念されていた。こうした背景から「高齢社会の活性化を推進するフレーム」として「定年延長」「年金制度改革」「健康ライフ、生涯学習のすすめ」施策が大胆に実行された。元気な高齢者は条件の許す限り就労、あるいはボランティア活動に汗を流すことができる。年金と所得とを組み合わせ、生活はなんとか維持できるという仕組みだ。

 数年前すったもんだの挙げ句、市町村合併特例法により隣りあう市町村が広域的に合併し人口10数万の特例市が生まれた。まちづくりの権限は基礎自治体に委譲されたが、自治体には金がない。情報公開法により自治体の財政収支が新聞で定期的に公表される。自治体の裁量権とされる法改正がされて以来地方税の固定資産税、都市計画税、介護保険料等は自治体間較差が出始めている。その情報で住み替えを真剣に考える市民も少なくない。ますます地域間競争が強まっている。行政は財政が逼迫し単なるハード中心の公共投資ができず、ほとんどが保守修理が中心である。いきおいまちづくり事業は、経営性・参加性・斬新性等の企画力豊かなNPO法人が多く手がけるようになる。この町では、定住人口は減少したが、ボランティア活動、学習研修、教養鑑賞、観光・健康レクリエーションなどで来町する交流人口は増加している。そのための支援活動をまちづくりNPO法人が有料サービスで行っているからである。

 さて、冒頭のコンクール案とは、町内の人口流出で廃屋となった十数件を活用し「日本海クラブ」を立ち上げる計画。環日本海では北朝鮮と韓国との統一により日韓中の交流の一層の促進、原発をかかえる日本海の環境・安全・文化の国際的、学際的な研究情報センター。廃屋の修復、借地料、運営費について公費補助を求めようとする構想なのだ。




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