2001/1 No.15 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
ランドスケープからの展望

増田  昇  大阪府立大学


 1980年代以降特に90年代に入ってからは、近代における機能重視や経済至上主義等へ異を唱える時代のニーズから社会のあらゆる分野で劇的な変化が起こっている。

 このような状況の中で、都市活動や都市生活の舞台となる都市空間を計画・設計する分野においては、人間を取り巻く環境を総合的に捉えるものと理解されるランドスケープの視点が益々重要性を帯びてくるものと考えられる。つまり、ランドスケープとは環境の基盤的要素である自然と人間活動(生活や営み)との相互作用の蓄積によって形成されるものであり、自然的、社会的なシステムが投影された「総合的な土地の姿」であるといえるが、環境の基本的枠組みともいえる土地の総合的な姿を拠り所とする風景主義的な考え方が、個々の要素が分化、特化した枠組みで捉えていた機能主義的な考え方に変わり今後有効と考えられる。特に、微妙な地形的襞や水系、多様で豊かな植生を持った自然環境の下で豊富な歴史や文化環境、長い時間経過の中で育まれてきた多様なストックを持った関西都市圏ではそれぞれの都市や地域、場所が保有する文脈を発掘、発見し、読み取った文脈の上で都市空間を計画・設計することが求められる。

 また、都市空間を計画・設計する分野は植物や生き物、人間といったいずれも生命体を対象とすることから成長や衰退など時間経過とともに必然の結果として変化するが、その変化は予測不可能な点も多々含まれる。また、自然と人間との関わり合いが多様な側面で重層しているといった特性も持っている。この予測不可能な変化や多様な側面の重層性に対応するためには、将来へのフレキシビリティを如何に担保するか、人間活動といったソフトが誘導しながら空間といったハードが追随するような仕組みを如何に構築するかが求められ、「歩みながら考える」、「できる所から徐々に始める」といった「しなやかさ」を持った計画技術の開発が不可欠であろう。さらに、歩みながら考える仕組みや生命体を健全に育成するためには、計画を継続的に評価するモニタリングの仕組みが重要となりモニタリングを通じて新たな計画・設計技術の蓄積が強く求められる。




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