2002/1 No.16 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
共同建替えマンションの共用空間にミニホール

後藤 祐介  ジーユー計画研究所


懸案だった深江北4共同建替え
 神戸市東灘区の深江地区は、近年、良好な住環境を有する阪神間住宅地として発展して来た地区であるが、木造賃貸共同住宅の集積度が高く、昭和60年代から神戸市では、木造賃貸住宅整備事業地区に指定し、約50軒の店舗併用木造住宅からなる深江北町4丁目ショッピングセンターの共同建替え(以下「深江北4共同建替え」と言う)は、この事業の一環として取り組んできた。
 平成7年1月の阪神・淡路大震災では、深江北4ショッピングセンター全体が全壊したため、いち早く共同建替え推進協議会を設置し、阪神・淡路大震災復興まちづくり事業の一環として、優良建築物等整備事業制度の適用に伴う行政からの特例的支援を受けつつ、懸案の共同建替え事業の推進を図って来た。

共用スペースとしての路地・ミニホールの提案
 零細権利者からなる市場の共同建替え事業の常として、権利調整、合意集約等において、幾多の難問に突き当り、紆余曲折を経て、平成10年にこの共同建替え事業のディベロッパーとして地元神戸を本拠地とする和田興産(株)が、そして設計者として(株)瀬戸本淳建築研究所が決まった。この両者の参画により事業計画内容として敷地の2分割・2期分棟方式と第1期A棟における総合設計制度の導入が方向づけられた。併せて容積率の割増しに見合う公開空地としてのマンション1階部分の通り抜け通路≒「路地」とミニホールの設置が提案された。
 これらの共用スペースは
  @容積率割増しのための公開空地にカウントされること
  A共同建替えマンションの付加価値を高めること
  B元「市場」の馴染みある「路地」機能を継承すること
  C地域に遊芸空間を提供するものであること
 として“一石四鳥”の前向きな効果が考えられる優れた提案として、地元協議会から歓迎された。

竣工式典でグランドピアノが贈与
 深江北4共同建替えA棟工事は、去る平成13年11月に関係者が集って竣工式典を行った。
 会場は、屋内公開空地としてのミニホール+路地であり、ここでディベロッパーの和田興産(株)からマンション管理組合に対し、ミニホール常設のグランドピアノが一台贈与され、早速、地域のピアニスト江副恵美氏による演奏が披露された。このミニホールは、照明や音響装置もされており、コンサートホールに早代りである。
 この贈り物については、ワコーレ和田憲昌社長の深江地域における音楽文化の歴史と継承への思い入れとロマンが込められている。

地域のゆとりと文化の溜まり場 −遊芸空間として
 阪神間住宅市街地は、宝塚歌劇や遊園地、甲子園球場、香雪美術館等々多くの遊芸空間が存在し、このことが阪神地域のアイデンティティとなっている。
 今回、このように提供されたマンションの共用スペースとしての「器」は比較的活用しやすい所有形態になっているものの、地域住民はこのような空間を上手に運用することにあまり馴れていない。しかし、このミニホールは、深江地域にとって街の小さなコンサートホール:演奏会、趣味の発表会、ウエディング等、各種イベントの地域融和型遊芸空間としてマンション管理会社( (株)KBSシラカワ )とも運営方法を相談しつつ、マンション管理組合や深江まちづくり協議会が積極的に関わり、息長く有意義な活用を図って行きたいと考えている。



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