2002/1 No.16 日本都市計画学会 関西支部だより

特集
NPOを中心とした地域と共生のまちづくり−NPO神戸まちづくり研究所−

野崎 隆一  NPO神戸まちづくり研究所


 震災から7年が経ち、震災後生まれたボランティアは、NPOとして対象を特定しながら活動を続けている。その対象は、福祉、教育、外国人、まちづくり、海外支援と多岐にわたる。ここ1、2年の傾向として、テーマはそれぞれ違っても、地域との関係が色濃く出てきたことが挙げられる。初めの頃は、地縁系団体(自治会、婦人会など)とのコンタクトはほとんどなく、むしろ一定の距離をおこうとしていたが、最近はNPO側が地域コミュニティへの関心を深め、積極的に連携を試みるようになってきたといえる。地縁団体の方もまだまだ他所者視する傾向が強い中、一部では、NPOの機動力を評価し、連携により新たな課題への取り組みを検討する動きが出てきた。
 こうした動きの中で、「神戸まちづくり研究所」は、以前から地縁組織とNPOとをつなぐ役割を目指してきたが、その一環となるいくつかの活動を紹介したい。

まちづくり講座
 13年度は、「神戸まちづくり塾」「とことん知ろうまちづくり」という2講座(各6回)を開講した。「神戸まちづくり塾」は震災から6年目の神戸まちづくりを「復興住宅支援」「まちづくり協議会」「外国人支援」「NPOの活動と制度」「住民エンパワー」という5つの切り口をテーマに捉えてみようという試みであった。最終回は、全テーマを合わせた大討論会とした。講座への参加者は、神戸復興塾塾生、NPO、学生、研究者などだった。だれが地域の主役なのか?地縁組織と他者(NPO、外国人、専門家)の関係の作り方は?新しい地域社会像は?などが、議論された。
 「とことん知ろうまちづくり」は、まちづくりに関心を持つ地域住民を対象にして、松本地区(兵庫区)、御蔵地区(長田区)、住吉浜手地区(東灘区)の3カ所を取り上げ、それぞれ地元住民が地域を案内し、まちづくりについて説明するという講座である。一日目は、まち歩きを中心にして地元住民が地区の課題や特徴について案内・説明を行う。二日目は、地区内の集会所で担当の専門家も加わって、まちづくりの進め方や課題について説明し、それについてディスカッションするという形をとった。参加者の大半が地区の住民になったことから、地区住民の交流会にもなり、まちづくり手法の違いも浮き彫りとなった。

復興住宅コミュニティ支援研究会
 復興6年目の被災地では、復興公営住宅におけるコミュニティ形成が大きな課題となっている。復興公営住宅のコミュニティ支援について、昨年4月に研究会が発足し「神戸まちづくり研究所」が事務局を引き受けることになった。イギリスのハウジング・アソシエーションやアメリカのC.D.Cといった海外事例の勉強会や、復興住宅における行政支援やNPOの活動についての実態ヒアリングなどを行ってきた。その結果、まずは復興住宅内に恒常的な交流スペースをつくることを始めることになった。神戸市灘区新在家に建設された市営新在家南住宅をモデルに選び、自治会長の了解を得て建物内の集会室を週3日開放してもらうことにした。研究会メンバー、NPO、学生達が運営に参加して、一ヶ月間、10時から16時までそこで実験的に「ふれあい喫茶」をオープンさせた。
 結果は、一日40人前後の入居者がコンスタントにやってきて、入居者同士や学生との交流が行われ好評であった。居心地の良い交流スペースが常時オープンしているということが、高齢者の閉じこもり防止に有効であることも明らかになった。こうしたスペースの運営をどのように入居者に受け継いでもらえるかが、今後の課題である。全国的にも公営住宅が、一時的なステップアップ住宅から高齢者中心の「終いのすみか」となっている現在、ハードを整備するだけでは十分ではないことは明らかとなっている。今後は、こうした社会実験を重ねながら、NPOによるコミュニティ支援の方向性を探っていきたい。

 NPOの世界でかつて「まちづくり」は、一分野であったが、最近の流れの中では、異分野のNPO間やNPOと行政をつなぐキーワードとして重要視されるようになってきた。地域という視点に立つことで、自らの活動の位置づけが見えてくるという認識が、共有されはじめているといえる。「住民主体」「地域共生」と言うとき、そのベースとなる「住民」や「コミュニティ」の在り方に言及せざるを得ない。今の神戸でNPOの活動が、個々のボランタリーなものから一種の社会変革的なベクトルをもちながら「地域社会」へと目を向けつつあること報告しておくとともに、「神戸まちづくり研究所」の役割を今後も探っていきたい。



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