2019 東日本大震災 復興調査

目的:東日本大震災発生から8年が経過しようとしている東北地方の復興事業やインタビュー調査概要を通じて,阪神・淡路大震災の復興事業の検証を行うとともに,その経験や技術継承のあり方を検討する材料とする。

日程:2019年2月24日(日)・25日(月)

場所:宮城県仙台市・石巻市・女川町・東松島市・山元町・岩沼市・名取市 参加者:越山(関西大学)石原(龍谷大学)木作(人と防災未来センター)大平(人と自然の博物館)花田(神戸市)安永(大阪市)中舎(京都市)

現地視察概要

女川町:女川町地域医療センター

女川湾口部の嵩上げおよび整備状況を一望できる場所.ようやく基盤整備が一段落したところであり,基幹道路と広大な土地が拡がっている様子が見えた.一面、災害危険区域指定されていることから、今後の土地利用や建築用途について不確定な要素が多く見られるとの意見があった。

女川町:コンテナ型複層仮設住宅

阪神・淡路大震災やこれまでの災害復興時には見られないタイプの仮設住宅。コンテナを用いた複層型であり、8年経過した時点でもほぼ原型を留めている。一般的なプレファブ仮設住宅に比べて長期性、敷地融通性、居住性等、新たな取り組みとして可能性が高いのではないか。

女川駅:プロムナード付近

女川駅から湾口部につながる中心市街地部分。津波の激甚被災地区であり、復興計画にて災害危険区域指定されているので、居住用建築物の新設はできない。海と山をつなぐ眺望、周辺の商店街含めた一体的な景観デザイン、民間含めた経営主体の設置など、観光的環境整備の点でハード・ソフト両面から特徴的な場所であるといえる。

石巻市:南浜地区

石巻市の南浜地区の復興状況の視察。災害危険区域指定されており、建築物はない状況。道路が整備されているが、まだ途中であり、被災復興の面影を感じる場所である。被災状況を伝える「南浜つなぐ館」が立地している。

石巻市:蛇田地区集団移転

石巻市市街地にある防災集団移転先の新住宅団地。戸建住宅および公営住宅、公園、街路、道路等が配置された計画的整備が完了した場所という雰囲気がある。既存のニュータウン整備や大規模住宅地開発に類似する。市街地にあるので周辺には商業施設や大規模幹線道路等があり、また海から距離が離れ、フラットな地形であり、被災地性という環境要素はほとんど感じない場所である。

東松島市:旧野蒜駅

東松島市の旧野蒜駅。現在は、周辺に公園等が整備され、震災復興メモリアルパークを形成し、震災復興伝承館がある。災害危険区域指定されているが、市条例で「津波防災区域」として種類分けされており、この場所は全面的な居住建築物禁止地域ではないので、数件住宅も見られる。しかし建築状況等があるわけではないので、今後の土地利用等について情報収集が必要である。

東松島市:野蒜地区集団移転地区

防災集団移転促進事業先の住宅団地として整備された高台エリア。仙石線の軌道変更に伴い、新駅舎前に整備された場所。公共施設、学校含め大規模な一体的な住宅団地としての特徴を有している。高台ではあるが海に向けた景観等はほぼ感じられない。

山元町:山下駅集団移転

山元町の内陸側にある防災集団移転促進事業の移転先かつ、土地区画整理事業で整備された新住宅団地。十分に幅員のある道路および歩道と低層住宅、戸建公営住宅、公園、街路が整備されている様子が見て取れた。駅前であり都会的な住宅団地であるが、全体的に画一的なデザインとなっている点が印象的な場所であった。

山元町:震災遺構 中浜小学校

震災遺構として整備される予定になっている小学校。被災状況のままであり、できる限りこの状況で保存がされる予定になっている。今後見学可能な形で外構が整備されると思われるが、訪問時はほぼ手つかずの状態であった。

岩沼市:玉浦西集団移転

岩沼市の防災集団移転促進事業の移転先。いくつかの事業手法を組み合わせて実施。まちづくり事例として評価が高い。街路設計や公園配置、建物デザイン等で特色が見られ、景観や建築空間面で工夫がみられる住宅団地となっている。

岩沼市:千年希望の丘

岩沼市海側地区の被災浸水エリアに整備された緑地、公園および丘。危険区域指定されている場所の利用方法は、東北沿岸の全てのエリアで検討課題となっているが、先駆けて公園整備を行っている地点であり、特に植樹による森林構想が特徴的である。

仙台市:荒浜周辺

仙台市海側地区の被災エリア。近くに震災遺構である荒浜小学校があり、旧市街地の被害状況が広い範囲で残る数少ない場所。今後整備が入る予定となっている。

現地視察まとめ

震災から8年が経過しているが、多くの場所でまだ被災跡が残り、またその活用状況が決定していない場所があることに驚いたと同時に、ハード整備されている場所の巨大な空間変容や大規模な住宅団地の設営に改めて大震災の被害の大きさを感じるものであった。復興計画に基づき各種事業が推進されて再建過程を歩んでいるとするなら、この空間状況の視察と計画内容から阪神・淡路大震災の教訓を読み取ることは正直難しいことだと感じた次第である。 (文責:越山)

インタビュー調査概要

日程:2019年2月25日 15時-17時
場所:仙台市役所
インタビュー対応者:仙台市まちづくり政策局 防災環境都市・震災復興室

当時の復興計画の作成・実行プロセス

・ 詳細については復興記録誌(第14章 復興計画・復興特区・復興交付金)に記述した.
・ 震災復興計画策定の検討当初に,阪神・淡路大震災の復興計画に携わった職員が神戸市から派遣され,当時の経験に基づくさまざまな助言を得られた.一方津波や宅地被害など被害態様が異なり,結果として独自に考え対応する部分が多かったト感じる.
・ 事前に地域防災計画はあったが,大規模な津波は想定以上の被害であり,生活再建含め総合的な復興計画を作成することとなった.
・ 直前まで新たな総合計画の策定作業をしていたが,それをベースにしつつ,被害・復興を踏まえ,上書き,追加,修正のイメージである.この総合計画策定の作業をしていたことが,復興計画を作成する上でプラスに働いたと考える.最終的に整合性がとりやすい環境にあった.
・ 事業計画を考える上で,予算枠組みが不透明であったが,財政局から「予算のことは気にするな」との助言があった.
・ 震災呉すぐに神戸市の復興記録を市長が読んでいたとのことで,いろいろ参考となったようである.当時の市長は,下の意見も聞いた上で自分の考えを持っている人だった.
・ 津波被災から防災集団移転事業等を担うことになる都市計画部門とは,週1-2度の勉強会を続けた.
・ 計画作成時に関係住民には可能な限りの説明と意見聴取,合意形成に配慮した.これらの進め方のプロセスについては,阪神・淡路の経験者からのアドバイスで参考にすることが多かった.
・ 有識者参加の委員会を立ち上げる時間はなく,アドバイザーとして有識者を選定し,またコンサルも使わずに復興計画策定作業は行った.
・ 基本方針を4月1日,復興計画素案となるビジョンを5月末に発表し,10月に復興計画を定めるというスケジュールとした.市民からは早く計画を,との声が大きかったが,被害状況や復興方向のみ極めや具体性を含めスケジュールを設定した.
・ 復興計画策定において想定外のことは多々あったが,いわば当然であり,柔軟に対応することが必要であったし,それは今後もそうだと思う.

今回の経験知識や教訓の伝え方について

・ 計画策定のプロセスの伝承については,アウトラインを伝える程度で十分であると考えており,復興誌の内容に記述されている.あとはその時々に最適な検討を対応する職員が行う,でよいと考えている.
・ 大学のエスノグラフィー調査がされており,ヒアリング調査からコンテンツ作成の活動が実行されている.
・ 危機管理・防災研修訓練プログラムとしてeラーニングの資料は準備されており,仙台市の職員として必要な知識を学ぶことができるような仕組みにはなっている.
・ eラーニングのコンテンツには「熊本地震と仙台市の支援」があり,震災経験から他の被災地支援の状況について記述してあり,その点で知識継承の内容が含まれている.
・ 復興計画策定プロセスという点からするなら,総合計画等を作成した経験が知識の伝達や継承に近いと感じる.計画作成を通じて,つまり業務を通じて知識が移転していくものがあると思う.単にこのときどうだった,というより考え方や作業の進め方,手順のようなものかと.
・ 今回の何がどうだったという事実を知識として直接伝えるような必要性はあまり感じておらず,これらは記録誌に書けるだけ書いておいたらよいと.時代,世代によってこの内容がそのまま使えるわけではない.制度も状況も被害も変わるから.

インタビュー調査まとめ

仙台市の職員に震災後に入った人でもおそらくすでに復興計画策定という手続き自体の情報はほとんどないと思われる.震災に関する業務経験という知識であり,知見は,情報として位置づけることが難しいものであることがわかった.経験した当事者もその内容を情報として伝えることにはあまり重きをおいていないとのことだったが,情報を理解し覚えるだけではなく,これらを経験した背景や条件,そこにどのように携わりどう考え,どのように対処したのか,という周辺知識を,新たな人たちが実働の中で学ぶことが大事なのかも知れない.その点で,大学研究者のはいるエスノグラフィー調査から得られるコンテンツや教育資料作成や,他の被災地支援を通じて周辺的知識情報を実体験から相対化するプロセスがこのような知識伝承では最重要なことかもしれないと,示唆をうけるヒアリングであった.

(文責:越山)