2020 東日本大震災 復興調査

目的:東日本大震災の復興都市計画事業状況が完了に近づきつつあり,その都市計画や住宅供給の面から,過去の経験事象がどのように利用されているか,また東日本大震災復興でどのような工夫が行われているか情報収集することを目的に,インタビュー調査及び現地視察を行った.

日程:2020年3月12日(木)
場所:宮城県名取市,岩沼市,仙台市
参加者:越山(関西大学)紅谷(兵庫県立大学)

現地視察調査概要

名取市閖上地区

名取市は、東日本大震災当時の人口が約7万3千人、令和2年の人口約7万9千人の自治体である。東日本大震災による津波の最大浸水深は約9mであり、市内で最も甚大な被害を受けたのが閖上地区である。名取川に面した地域において、被災市街地復興土地区画整理事業(面積約57ha)、防災集団移転促進事業(移転先団地面積約3.9ha)、災害公営住宅整備事業(集合住宅285戸、戸建178戸)により、復興まちづくりが進められた。 区画整理地区は6つの種別(公共公益施設地区、センター地区、業務地区、一般住宅地区、まちなみ再生A地区、まちなみ再生B地区)に区分され、地区計画がかけられている。名取川に最も近いゾーンは、「まちなみ再生ゾーン」と位置付けられ、賑わい創出を目的に2019年4月には商業施設「かわまちてらす」がオープンした。まちなみ再生ゾーンは用途地域が準工業地域に変更となり、地区計画も見直されて工場兼店舗が建築可能となり、造り酒屋も立地している。また河川防災ステーション事業により、水防センター・震災復興伝承館が整備されている。
▲かわまちてらす
▲復興公営住宅

岩沼市玉浦西地区

岩沼市では、津波で大きな被害を受けた海沿いの相野釜、藤曽根、二野倉、長谷釜、蒲崎、新浜の6地区の移転先として、玉浦西地区を整備した。これら6地区は旧・玉浦村としてまとまりがあり、1カ所に集約移転することとなったが、玉浦西地区内ではコミュニティごとにまとまって移転している。また移転希望者が当初のアンケート調査よりも減少したため、余った土地に商業施設(スーパーマーケット)が進出しており、既存の市街地から距離があるため、住民の買い物利便性の向上に寄与している。
▲地区内に立地するスーパーマーケット



地区内は、自動車が通行する道路に加えて、貞山緑道やオレンジ色に舗装された歩行者動線が整備されており、スロープでの移動も考慮されている。公園や緩やかにカーブされた道路によってアイストップなどシークエンス景観にも配慮されていると感じた。地区計画によって、外周部の緑地帯や電線の地中化、テレビアンテナの壁面設置、生け垣・植栽の整備などの地域のルールも定められている。
公園・緑地が緑道でつながれている
▲スロープで整備されたオレンジ色の歩行者用通路
▲自動車動線は6m道路

インタビュー調査概要


 日程:2020年3月12日 16-18時
 場所:宮城県建築住宅センター
 インタビュー対応者:当時の住宅計画等担当者 3名


宮城県建築住宅センターにて、東日本大震災での宮城県における住まいの復興の取組についてレクチャーを受けた。応急仮設住宅は、プレハブ仮設が22,095戸、みなし仮設が最大26,056戸であり、プレハブ仮設は約6ヶ月でその大部分を県が整備した。またこれらと別に、市町からの要望に基づいて高齢者・障がい者向けのグループホーム型仮設住宅を36棟、290戸整備している。  2011年に策定された宮城県復興住宅計画では、新規で必要な住宅戸数は約72,000戸と見積もられ、そのうち約12,000戸が災害公営住宅として整備されることとなった。防災集団移転促進事業は195地区で2019年2月造成完了、災害公営住宅は最終的に15,823戸整備され、2019年3月に全戸完成している。災害公営住宅では、宮城県としては初めて買い取り方式(計10,608戸)が導入され、それらの内、約4,000戸は都市再生機構(UR)の建設であり、約2,000戸は市町ごとにつくられた地元工務店による協議会が建設している。  また将来的に災害公営住宅が余ってくることが想定されるため、長期にわたって利用可能なRC造の集合住宅型と、用途廃止や払い下げが早期に可能となる木造戸建型との組み合わせを考えている。
▲インタビュー調査風景

担当者まとめ

2011年の地震・津波から9年後の状況を訪問した。被災直後には、復興まで気が遠くなるような道のりがあると感じられたが、岩沼市玉浦西地区では集団移転により整った市街地が整備されており、住宅地の設計では細やかな配慮が随所に感じられた。名取市閖上地区においても、宅地・道路が整備され、建物の建設も進行中であった。これらの新たな町が、住民の新しい故郷として住み親しまれていく過程と共に、震災前のコミュニティのアイデンティティがどのように受け継がれていくのか、元地の活用状況と共に、今後も注目していきたい。

(文責:紅谷)