西宮市

2004年の分析(街の復興カルテ 2004年度版p176より)

ここでは定点三地区において撮り続けた定点写真のいくつかを示しつつ、 町並み景観の変化について若千の考察を行う。撮影定点は安井地区、中央商店街のそれぞれ5ポイント、津門地区の4ポイント、合計14ポイントであり、1ポイント3枚の写真を並べることとして一つまり10年間の変化を3期の断面からみて一整理した。 撮影時点は年度を写真脚部に表示しているが、 震災直後の1995年春、 定点調査のはじまった1996年の夏、そして97年から99年、2000年の夏、 2004年の夏から冬などである。 以下には、前節までの分析を参照しつつ、 町並み景観の変化 再建建物の特徴について取りまとめる。

安井地区では、都市計画道路の構築整備による新しい沿道景観の生成一主にマンションがつくるーが目立つが、これに対して内部市街地の景観変動はどうか。全壊など被災度大の戸建て住宅群が再建される自然な建設活動を基幹に、低層共同住宅が一部入り混じるという形が変化のベースでである。このなかで和風から洋風へのデザインの基調の変容、全般に落ち着いた色彩 意匠の使用-これらは低層共同住宅とも共通して進行していると見える-のほか、プレハブ系住宅の多さ、宅地内の緑の減少などが町並み変化の特徴点としてあげられる。内部市街地の大規模マンションも、 住宅地系用途地域などの都市計画制限が効いているのか4~5階建が主流で、現時点ではチグハグというほどではない。

中央商店街では、中心的な柳通りの商店群がなぎ倒されるように損壊したこともあり、当初数年間は動きが鈍かったが、このところの変容は著しい。とくに地区北半では大規模敷地への取りまとめと高層共同住宅建設がすすみ、 地域景観の様変わりは大幅である。町並み景観の主要な変化としては、 数多かった空地や仮設店舗は今は散在する程度となり、廃業やマンション増加などにより商店の連坦という商店街の伝統的なかたちが崩れてきた、アーケード除去と舗装美化などの環境整備の進行、などがある。結果として空が見える明るい商店街になったが、スカイラインの乱れや建物の側壁が目立つなどの中遠景の混乱が問題視されよう。アーケードが作り出していたまち景観の一体性も今はない。 目を見張る変貌はあったが、まとまった地区景観形成には達していないというのが現状である。

津門地区は三地区の中では被災の度合いが緩やかであったこともあってか、復旧は着実に進められており、町並み景観としても安定的な回復ぶりを示している。昌林寺や津門神社の再建に現れている、旧集落を母体とする秩序感の存在を再建の過程にもみる気がする。ここでも戸建住宅の意匠から日本瓦その他の和風要素が減少し、シングル葺、金属板や既成のボード類、タイルなどの現代的素材が外観をつくりはじめている。 以上のように町並み景観の変化は地区ごとに違いがあるものの、 共通してマンションなどの建設による中高層化、 住戸建築デザインにおける現代的材料の浸透と外観の洋風化などが顕著であり、また2000年から現在をつらぬく中高層共同住宅化の勢いは止まりそうにない。町並み景観の行く先はこれらが新しい混成のしくみを持ちうるかにかかっている、といえよう。

調査地区

●安井地区
番号 地点の地区名
1 安井2丁目
2 安井3丁目
3 千歳町3~4丁目
4 千歳1丁目
5 寿2丁目

●中央商店街
1 柳通り
2 柳通り
3 さくら通り
4 柳通り
5 駅前通り

●津門地区
1 西口町4丁目
2 西口町7丁目
3 津門神社前
4 津門神社

調査結果

安井地区

インタビュー調査風景
((財)阪神・淡路大震災記念協会「街の復興カルテ 2004年度版」,p177)
変化なし
変化なし
インタビュー調査風景
((財)阪神・淡路大震災記念協会「街の復興カルテ 2004年度版」,p178)
変化なし
左側の建物の外壁がグレーから黄色に変化している。
インタビュー調査風景
((財)阪神・淡路大震災記念協会「街の復興カルテ 2004年度版」,p179)
左側の茶色のマンション(3階建て)の後方に、マンション(3階建て)が建設されている。
左側の建物の庇が撤去されている。

中央商店街

インタビュー調査風景
((財)阪神・淡路大震災記念協会「街の復興カルテ 2004年度版」,p180)
左側の建物の庇が撤去されている。 左側にマンション(15階建て66戸)が建設されている。
右側店舗の後方にマンションが建設されている。
インタビュー調査風景
((財)阪神・淡路大震災記念協会「街の復興カルテ 2004年度版」,p181)
空地がマンションへの進入路になっている。
タクシー乗り場は、一般車のロータリーになっている。

津門地区

インタビュー調査風景
((財)阪神・淡路大震災記念協会「街の復興カルテ 2004年度版」,p182)
変化なし
生け垣が、フェンス(上部、アルミ鋳物フェンス。下部、ブロック)に変更されている。宅地内の緑が減少している。
インタビュー調査風景
((財)阪神・淡路大震災記念協会「街の復興カルテ 2004年度版」,p183)
変化なし
変化なし

まとめ

安井地区

地点⑤は、沿道沿いでマンションが建設されている。安井地区では、地区計画が定められている。建物の高さ制限がある。地点⑤は、戸建て住宅を主とする西部市街地に位置しており、建物の高さ制限(18m以下。敷地面積500㎡以下は10m)がある。幹線道路沿い(山手幹線)では沿道の建物の高さが4~5階に抑えられている。

中央商店街

「結果として空が見える明るい商店街になったが、 スカイラインの乱れや建物の側壁が目立つなどの中遠景の混乱が問題視されよう。アーケードが作り出していたまち景観の一体性も今はない。 目を見張る変貌はあったが、まとまった地区景観形成には達していないというのが現状である。(街の復興カルテ2005年度版より)」 地点②、③、④では、マンション(15階建て66戸)が建設され、景観を変化させている。地点④では、マンションが建設されることで、分かれていた敷地が、同一使用者の敷地になった。

津門地区

「ここでも戸建住宅の意匠から日本瓦その他の和風要素が減少し、 シングル葺、 金属板や既成のボード類、タイルなどの現代的素材が外観をつくりはじめている。(街の復興カルテ2005年度版より)」に関連して、地点②では、生け垣が、フェンス(下部、ブロック)に変更され、外観の緑が減少している。