2019 熊本地震 復興調査

目的:2016年に発生した熊本地震の復興事業は現在進行中であり,また阪神・淡路大震災や東日本大震災復興の知見が多く投入されている.現場にて担当者ヒアリングを通じて,経験や知識伝達の状況について情報を収集するとともに,現地状況視察を行い,知識継承を検討する材料とする.

日程:2019年11月28日(木)
場所:熊本県益城町役場,益城町都市計画事業区域
参加者:越山(関西大学)紅谷(兵庫県立大学)石原(龍谷大学)安永(大阪市)

インタビュー調査概要

日程:2019日11月28日 9-11時
場所:益城町役場
インタビュー対応者:益城町危機管理監および担当関係者 5名

▲インタビュー調査風景

仮設住宅用地の確保

仮設住宅用地を確保するため、職員や親戚の土地などを中心に土地を探していった。元々、大規模半壊以上の被害の方が対象なので、当初は約1200戸の予定地を探していたが、途中で特例として半壊以上で仮設住宅に入居可能と変更されたので、約1580戸の土地を確保することとなった。

県道熊本高森線道路拡幅事業

県道熊本高森線は、途中で車線が減少するため慢性的な渋滞が発生していた。熊本地震の際も緊急輸送路に指定されていたが、物資を運べなかった。そこで、4車線化の道路拡幅を行うこととした。

木山地区土地区画整理事業

木山の交差点付近は、右折レーンがなく渋滞することが多かったため、平成2年から4年にかけて沿道区画整理事業を検討したことがあった。その後、平成27年から再度、検討を進めていたところで地震が発生した。 地震による被害が大きく住宅地では8割以上が大規模半壊以上の被害だったこと、公園が少なく避難場所まで距離があったこと、宅地被害が大きく個別復旧だと費用負担が大きくなること、道路拡幅だけでは地域に残れない人や企業が出ることなどの理由から土地区画整理事業が望ましいと考え、地権者に訪問やアンケートで説明しながら意向を確認し、進めていった。地区や団体ごとに説明会を開催し、住民や関係者とコミュニケーションをとるよう気を付けた。時間はかかったが、事業を進めるためには、その手法が良かった。また事業自体は、町ではなく、県の事業として実施している。

まちづくり協議会

益城町の多くの地区でまちづくり協議会をつくってもらっている。目的は、避難路、避難地の確保などであり、熊本地震では避難場所が離れていたり、ブロック塀が倒れて避難できなかった例があった。今回の震災の経験から問題点を整理し、今後、自宅再建にあたってはブロック塀を避けたり、隅切りをしたり、住みよい町、安全な町にするために地区計画や協定などをつくろうとしている。多くのまちづくり協議会には、コンサルタントがサポートに入っている。

外部からの支援

震災後、神戸市が復興計画の作り方やまちづくり協議会についてアドバイスに入ってくれたことは大きかった。また野村総合研究所が、2名常駐する形で支援してくれ、住民との架け橋にもなってくれた。地元の大学である熊本大学、熊本県立大学も様々な形でサポートしてくれた。例えば熊本大学は、河川敷に「熊本大学ましきラボ」を設けて、行政と地域の架け橋になってくれた。 過去の災害復興の教訓や都市計画制度、補助、予算などについて、災害後、外部からアドバイスがあると、被災自治体の職員にとって大きな助けになるだろう。

現地視察概要

 自力再建が困難な被災者には、災害公営住宅を建設しており、計21地区に平屋戸建タイプを計99戸、集合住宅タイプを計572戸、合計671戸をつくる予定である。入居前に顔合わせ会を開催し、入居者や地域との交流のきっかけを作ると共に、団地のルールづくりや運営体制づくりの支援を行っている。
▲災害公営住宅(集合住宅タイプ)
▲災害公営住宅(平屋戸建タイプ)


益城町の中でも被害の大きかったエリアを通っている県道熊本高森線は、復興計画において約3.5kmにわたって2車線・幅10mから4車線・幅27mへの道路拡幅事業が実施されている。モデルとして一部区間を先行して道路拡幅し、広がった道路のイメージをしやすくしている。また既に再建された建物を避けるように、道路は直線でなく、なだらなかカーブ状となっている。
▲県道熊本高森線の道路拡幅工事


益城町役場が立地していた木山地区は、復興計画において都市拠点として位置づけられ、土地区画整理事業が実施されている(約28.3ha)。事業区域内では、被災した建物は撤去され、空地が目立つ状況である一方、一部には被災していない住宅が散見される。
▲木山土地区画整理事業区域
▲木山土地区画整理事業区域


熊本地震を引き起こした布田川断層のずれが180mにわたって農地に現れ、視覚的に横ずれ断層の様子を確認することができる。2017年11月に国の天然記念物に指定された。長期にわたって地震の経験・教訓を伝えていくために、このような震災遺構の存在は、防災教育において大きな効果があると期待される。
▲布田川断層帯(堂園地区)

担当者まとめ

地震から約3年半後の調査であり、地域の特徴に合った災害公営住宅は建設されていたものの、町役場は仮設庁舎のままであり、被害の大きかった地区の土地区画整理事業や道路拡幅事業では、完成まで道半ばの状況であった。被害の甚大な地区において事業完了までの長いプロセスをどのようにマネジメントしていけば被災者や地域の連続的な復興が成し遂げられるのか、過去の災害復興のケースと同じく、残された課題として感じられた。県道熊本高森線の道路拡幅は地域の構造を大きく変える事業であり、道路沿いに商業施設や住宅の集積ができていけば、地域の活性化につながると期待されるため、土地区画整理事業区域及び周辺での民間の土地利用の今後の変化を継続的に注視していきたい。

(文責:紅谷)