京都市復興イメージトレーニング研修の参加


目的:第1回委員会で,阪神淡路大震災の復興に携わった関係者から情報提供をいただいたが,普段,震災復興に関わっていない若手の行政職員にとっては,発災から復興事業着手に至る流れはもちろん,そもそも,平時のまちづくりや住宅政策に関する知識がなく,また復興のキーパーソンの名前がわからないことや,行政組織の体制が当時と今,自治体間でも違うため,情報提供を受けた内容のイメージが共有しづらい状況だった。 また,近年では,地域住民がまちづくり組織を結成し,主体的にまちづくりを行うことが広く行われているほか,事前復興の取り組みを進めている自治体もあり,阪神淡路大震災の復興と,これからの復興の方法は必ずしも一致しないのではないかとの意見もあった。そこで,経験者からの一方的な知識の伝達ではなく,「次の大災害が起きたら,どのように復興事業を進めるか」という視点で調査を行う目的から,委員会として京都市の復興イメージトレーニングへ参加することとした。

日程:2018年12月19日(水) 2019年1月29日(火)
参加者:紅谷(兵庫県立大学)石原(龍谷大学)安永(大阪市)花田(神戸市)中舎(京都市)

復興イメージトレーニングについて

⑴ 「復興イメージトレーニング」は,国土交通省が作成した「復興まちづくりイメージトレーニングの手引き」に沿って、ある地域を選び被災状況を具体的に想定したうえで,復興のシナリオを個人と都市計画の双方の視点から描き比較し,復興まちづくり計画の策定のポイントや策定における課題を学ぶことを目的としたもので、京都市では職員研修の位置付けで,平成28年度から内容を更新しながら毎年実施されている。
「復興まちづくりイメージトレーニングの手引き」(国土交通省)から引用


⑵ 本委員会としては,平成30年12月と翌1月に2日間に渡って開催された京都市復興イメージトレーニング研修に参加した。その概要は次のとおりである。 (※対象地の住民への配慮から具体的な地名は伏せている。)
※過去に区画整理事業未実施の地域,対象地の中心には事業決定できていない都市計画道路が存在,京町家等の建ち並びは多くない地域
開催日時1日目 1日目 平成30年12月19日(水)
 午前9時30分から午後5時まで
 午前 座学
・京都大学防災研究所 牧教授による講義
 ~京都市の復興課題(仮称)~
  ・防災ゲーム「クロスロード」
 午後 フィールドワーク,模擬訓練
・現地確認:右京区○○学区(JR○○駅周辺)
・復興都市計画マニュアルの模擬訓練の実施
・復興イメトレの概要説明・補足説明
※事前課題として,行政の立場から市街地復興シナリオと,被災者の立場から生活再建シナリオを各自で作成。
開催日時2日目  2日目 平成31年1月29日(火)
 午前10時から午後5時まで
・復興イメージトレーニング
(第1部)市街地復興シナリオの作成
(第2部)生活再建シナリオの発表
(第3部)生活再建シナリオを踏まえた市街地復興シナリオの検討
  講評
対象地 右京区○○学区(JR○○駅周辺)

⑶ 研修2日目の復興イメージトレーニングでは,4班に分かれワークショップ形式で,各自で作成したシナリオをもとに、班ごとに市街地復興シナリオと生活再建シナリオをまとめる作業を行った後,まとめた内容を班ごとに発表をおこなった。 市街地復興シナリオの作成には当たっては,①駅前委の再開発,②都市計画道路,③公営住宅のそれぞれの整備の有無が必須検討項目とされており,復興シナリオに地域の課題解決をどう盛り込むかが議論のポイントとなっていた。 また,生活再建シナリオの検討に当たっては,被災世帯を本人とした場合と,単身高齢者世帯を想定した,77歳のAさんとした場合を参加者の半数ずつ設定しており,被災者の属性の違いによって求める生活再建方法が異なるため,災害公営住宅や持家再建への補助の必要性など多様な意見が交わされていた。

研修参加のまとめ

研修に参加して,良かった点と工夫が必要と感じた点を以下に挙げる。研修を通して得た全体的な感想としては,震災復興を考えるうえで非常に有効であると感じた。

良かった点

・ 発災直後の建築制限から,復興計画の作成に至る流れを理解できた。
 ・ 普段の業務では,大規模災害が起きた後のことを想定して物事を考えることはほとんどないため,復興まちづくりを考えることの重要性を認識できた。
 ・ 被災住民の立場になって生活再建を考える経験ができた。

工夫が必要だと感じた点

・ 京都市の復興イメトレは,住民参加型ではなく,実際の住民の意見が聞けないため,机上の空論になってしまっている感が否めない。
 ・ 一度の参加だけでは,すぐに知識の定着まで至らないため,定期的なフィードバックが必要だと感じた。
 ・ 行政職員である以上,誰しもが一度は考えるべき事柄だと思うので,もう少し大規模に開催しても良いのではないか。

自治体の震災復興の知識の継承とは何か

自治体の職員と言っても、阪神淡路大震災を経験していない世代では、震災復興に対する知識の習得については、こういった研修への参加も含めて、個人の自主的な学習意欲に委ねられている現状がある。特に京都市では、幸いなことに阪神大震災以降も大きな地震被害を経験しておらず、こうした事前復興の取り組みを行っていること自体、「自分の業務と関係ないから」と一部の意欲的な人以外に、あまり関心を持たれていない印象も受けた。 かく言う筆者も,復興検証特別委員会の活動において、復興の検証と知識の継承というテーマを与えられたものの、学生時代を含めて、社会に出てからこれまでの間、このテーマを真剣に考えたことはなく,委員会の活動に参加して「阪神淡路大震災の復興について何も知らない」ということをまず初めに実感した。折しも、この文章を書いている最中に、東日本大震災から10年という節目を迎え、震災復興の検証というワードが、メディアでも取り上げられている。巨額の復興予算の使い道や、復興計画の良し悪しに対する議論も当然あるが、阪神淡路大震災の経験が適切に活かされたのかという点に注目した記事も多く,それだけ復興検証知識・経験の継承は重要な要素である。にも関わらず、筆者を含めて、有事には復興を担うであろう若手の自治体職員には、その意識が希薄なのはなぜだろう。改めて日々の業務と事前復興の接点を考えてみると、これまであまり認識できていなかったことに気がついた。日々の業務である住宅の耐震改修や防火改修への補助事業や、密集市街地の解消への取り組みもまさに事前復興である。個々人が認識しているかどうかはともかく、誰しも業務上で事前復興に関わっているのである。耐震改修については当然、建築基準法の改正という目に見える形で、阪神大震災の検証結果が反映されているし、密集市街地の解消のための防災まちづくりの取り組みは、言葉が違うだけでその地域ごとの事前復興計画そのものである。つまり、震災復興の知識の継承というワードには、受け取る側がその具体的な内容を思い浮かべることができていないだけで,少なくとも,そのエッセンスについては、実は行政の日々の業務に溶け込んで,活用されているのである。溶け込んでしまっているからこそ、関連性を認識しづらい状況が生じているのである。だからこそ,こうした研修を通じて,過去の復興事例に触れ,事前復興を考えることで,日々の業務の見方が変われば,継承されるべき知識が何なのか,その問いの答えにたどり着けるのではないだろうか。

 (文責:中舎)