大阪市役所ヒアリング

目的:大阪市を縦断する上町断層は、全国的にみて最も危険度の高い断層の一つであり、もし上町断層を震源とする地震が発生した場合には、大阪市内では最大深度7の揺れとなり、全半壊の建物が27.7万棟、死者約8,500名と想定される大きな被害が発生すると懸念されている。大阪市においては、密集住宅市街地における防災性の一層の向上に向け、密集住宅市街地重点整備事業を進めており、平成25年度に「大阪市密集住宅市街地重点整備プログラム」をとりまとめている。 そこで、阪神・淡路大震災被災地に隣接している大阪市において,「大阪市密集住宅市街地重点整備プログラム」といった密集市街地対策についてヒアリングを実施することで、密集市街地の現状や大都市のかかえる課題を把握し、災害対策及び復興計画のあり方,さらには25年前の震災被害や東日本大震災等の教訓がどのように活かされているか,情報収集を行う。

日程:2020年2月25日(火)14:00-15:30
場所:大阪市都市整備局 会議室
対応者:大阪市都市整備局 1名
訪問者:越山(関西大学)紅谷(兵庫県立大学)木作(人と防災未来センター)安永(大阪市)

ヒアリング内容

密集市街地整備について

・密集市街地の定義は様々であるが、大阪市では、ある程度の広さがあり、延焼遮断帯や主要道路、河川で囲まれた防災街区単位で密集市街地を抽出している。また、JR環状線の外周部に多く立地し、約1300haにものぼる。
 ・大阪市の基本的な考え方は、公共事業での整備ではなく、建替、除却の支援、狭隘道路の拡幅、広場の整備など民間(住民)への補助メニューを整理し事業を進めている。
 ・生野区南部地区を平成6年からモデル整備地区として整備している。
 ・「建替え」「解体」「耐震」の補助金や減税のメニューがあり、民間(住民)主導で事業が進められている。
 ・整備プログラムにおける平成32年度目標は11/12地区としているものの、平成30年度で6/12街区にとどまっている。
 ・その大きな原因は、民間主導にならざるを得ず、住民の高齢化により建て替えの意欲が薄いことや、権利関係がややこしいこと等があげられる。
 ・横浜市等に比べると密集市街地に対する予算は少ないが、現在は予算以上の補助の申請は来ていない状況である。
 ・大阪市では区画整理による密集市街地の対策は行っていない。
 ・民間(住民)からの申請が契機となるため、制度や建て替えの広報が重要となる。

それぞれの補助メニューについて

・補助事業で解体する場合は、市営住宅を斡旋する制度もある。生野区南部地区と西成に市営住宅があり、高齢者は、家探し、引っ越しの仕方も分からないので、市営住宅だと安心できると、喜んで入ってもらっている。大家さんからも、便利な制度と言ってもらっている。民間のいい住宅だと家賃も高く、市営住宅であれば、高齢者は家賃を抑えられる。従前の家賃よりは、すこし上がるが、5年かけて徐々に上がる緩和措置もある。
 ・建て替えのきっかけとしては、土地や建物の相続や地主の権限等のライフイベントがきっかけとなる。
 ・補助メニューGの空地の利用は、駐車場が1/3を占めており、1/3がそのままの空地となっている。その他の対応として、大阪市の未利用地を活用する「まちかど広場」があり、防炎帯の役割もある。大阪市と地域まちづくり協議会とで協定を結び、土地を貸し出している。20年間という長い期間ではあるが、地域の方がワークショップで考えて、管理運営をやっていくスキーム。60代で関わりはじめて、80代ということで、高齢化して管理が大変という声も多く、管理が大変、地元で悪さをする中学生が多いなど、課題も多い。生野区南部地区で、6カ所のまちかど広場、他の優先地区で4カ所ある。
・いちばん空き家が多いのは、東住吉区だが、そこは優先地区にはほとんどかかっていない。東住吉区は、戦後のスプロールで町ができたところで、郊外に似ている。
・密集だからといって、建て変わっていないわけではない。生野区南部地区は、地価が安いので、戸建てが多く建っている。中小のハウスメーカーが木賃アパートを買い取り、分割し、宅地分譲している。民間事業者が参入すると、町の様子はガラッと変わる。
 ・補助申請はメニューF(解体補助)が最も多く、200件程度の実績がある。木造住宅は20万戸あったが、現在3万戸までに減少した。
 ・6~7割が戸建てに建て替わっており、解体の補助で戸建に建て替えるスキームができていると思われる。

他都市、学識、コンサル等とのつながりについて

・他都市、府県との連携については、大阪府との連携として補助金の負担分担がある。
 ・整備プログラムが来年度末で期限をむかえるため、大阪府と考えを合わせて進めていきたい。
 ・コンサルや学識との連携についてはあまりなく、国から出される指針にそって副市長トップのプロジェクトチームを作り整備プログラムを策定した。

阪神淡路大震災をはじめとした震災の経験をふまえ考慮した点は?

・震災の事前の備えが乏しいことも課題の一つだと認識している。
・大阪市は戦前の木造住宅も点在し火災の危険性も高いため、次期プログラムにこれらの対応も検討したい。

その他

・大阪市は4mぎりぎりの道路が多く、密集市街地が多い。建て替わっても隣接する建物の距離は変わらないことも課題である。
・住民に危機意識を持ってもらうことも大きな課題である。
・台風21号で被災した家が多く、その後は、申請件数が増えた。災害を契機に危機感を感じた方が申請に来てくれたのだと思う。

ヒアリングまとめ

密集市街地の現状や大都市のかかえる課題の把握を目的に大阪市へのヒアリングを実施した。密集市街地はJR環状線の外周部に広く分布しており、密集市街地の不燃化を図るため、民間(住民)への老朽住宅の除却や建替えの支援を拡充させ事業を進めている。これらの施策については、民間からの申請が契機となることもあり、「密集住宅市街地整備プログラム」で定めた目標には達していない。今後については、民間への更なる広報を行うとともに新たなプログラムの策定を行っていくこととしている。また、密集市街地のモデル整備地区として生野区南部地区では、老朽住宅の建替えや狭あい道路の拡幅整備等への支援および道路・公園の整備等が進められていた。 これら公民のソフト面・ハード面での取り組みにより地域の防災力の向上がはかられていることがわかった。そして、事業の更なる発展や策定される新たなプログラムについて引き続き注目していきたいと感じた

(文責:安永)